HOME >>

Prince of Tennis

いざなう左手

 お風呂に入ろうと、スポポンと服を脱ぎ捨て鏡の前。
 ふいに体中に散らばる赤いしるしに気がついた。

「おわぁ、痕、めっちゃついとるやん!」

 それを指先で一つずつなぞっていたら、体の芯がじん…と痺れた。

 それと同時に、

『金ちゃん…っ、金太郎…!』

 普段、白い頬が真っ赤に色付いて、整った眉根が切羽詰まったように寄るのとか、怒ったときや情事のときにしか呼ばれない呼び方を脳内でクリアに再生してしまって、

「や、あかん…」

 ぺちゃり、と脱衣場にへたり込む。

「やあぁ、だめ、しらいしぃ…!」

 目をきつく閉じても、頭を勢いよく振っても、全然消えてくれないその恋人が、

 ―― 金ちゃん、早よう、ここまで堕ちておいで。

 と、包帯の巻かれた左手を差し出して綺麗に微笑っている気がした。


 [ おしまい ]
白金
毒/の/華の歌詞の鬼畜白石が好き過ぎてやらかしました。
ちょっとエロちっくですが、大したことないので、普通に投下。笑
そしてこのあとお風呂からあがった (勿論お風呂でひとりでシた) 金ちゃんは、どうにも物足りなくてお家の電話から白石に電話するね白石飛んでくるね絶対!! ってうささんと話こんでいました。笑
12.03.04 up





桜の花びら舞い散る春

「あれ? 金ちゃん?」

 いつも賑やかすぎるくらいコートを騒がしている四天宝寺テニス部最年少天真爛漫可愛い可愛いゴンタクレの姿が見あたらなくて、部長兼保護者兼恋人である白石は辺りをぐるり、と見回した。

 小さいけれど、ひときわ目を惹く赤毛は何処にも見つからない。

 もう一度首を傾げると、

「ああ、金太郎なら、向こうの木陰で寝こけましたよ」

 隣のコートで謙也と打ち合っていた財前がそう教えてくれた。

「ホンマか。ちょっと見てくるわ」
「ただ、寝てるだけっスよ」
「でも、まだちょっと寒いしな。木陰でお昼寝は寒いやろ」

 風邪ひいてまうかも、と言えば、あのゴンタクレは風邪なんかひかないと思いますけど。相変わらず過保護っすね、と呆れたような声が返ってきたが、白石は気に留めず、一旦コートの外に出た。

「金ちゃーん」

 呼びながら、桜の花びらが舞い散る木々の根本に歩みを進める。

「ん?」

 程なくして、小さな足と、長い脚が見えてきた。

「なんでお前までここでサボっとるんや…」

 金ちゃんは四天宝寺テニス部サボり魔兼無我マニアの千歳の上で、すぴすぴと規則正しい寝息をたてていた。

「トトロとメイちゃんみたいやな」

 思わず、くすりと微笑を零しながら、金ちゃんだけを抱き起こす。

「こーら金ちゃーん、起きぃ」
「ん〜ん〜…」

 夢と現の世界を行ったり来たりして、むずかる金ちゃんの柔らかな頬を指先でくすぐる。

「うみゅ、しらいしぃー…?」

 寝起きで舌足らずになっている呼び方は無性に可愛らしかった。

「おそようやで、金ちゃん」

 中腰でいたのを止め、白石も完璧に千歳の隣に腰を下ろしてから、金ちゃんの軽い体を完璧に自分の膝に移動させた。

「きょうなぁ、おひさんぽかぽかであったかいやん」

 やから、寝てもうたよ、とまだふわふわした口調で言うのを、そうやなぁ、と答える。

「今日はみんなで桜餅でも食べて帰ろうか?」

 赤毛に髪飾りのようについた花びらを一つずつ指先で摘んでいってやりながら、買い食いはあかんで、といつも口を酸っぱくしている白石にしては珍しい提案をした。

 だから金太郎は一瞬何を言われたのかが認識出来ず、きょとん、とくりくりの瞳を瞬いた。

「桜の下でみんなで食べるのって、いつもより美味いと思わん?」

 な? と優しく微笑む白石に金太郎は大きく頷く。

「うん白石! わいもめっちゃ思うでっ!」

 4月10日の四天宝寺中には春の暖かな太陽に負けない、眩しい笑顔が咲いていた。


 [ おしまい ]
白金+四天メンバー
四天の日滑り込みセーフでした。
わきゃわきゃ桜餅を食べにいく四天もいずれ書きたいです。
12.04.10 up





ソース味のくちづけ

「白石! 誕生日、おめでとうさん!」
「おお、ありがとうな金ちゃん」

「今日はわいのたこ焼き分けたるで!」
「珍しいなぁ。でも、明日返せーって言うんやろ?」

「言わんもん!」
「ホンマかいな?」

「うー…そんなイジワル言うんならやらんで!」
「えー、ひどいやん」

「白石がイジワル言うからやっ」
「嘘嘘。金ちゃんのたこ焼き欲しいなー?」

「ホンマに?」
「もちろん、たこ焼きや無くてもええけど」

「う?」
「ソースとかでもええよ」

「ソースだけ…って、なんで? 嬉しゅうないやん?」
「そうかな。俺は嬉しいで」

「んー??」
「はー、金ちゃんはお鈍さんやな」

「ふんぎぃ、なんやて!?」
「つまりこういうことや」

「んむっ!」
「………んー……ごちそうさま」

「あ、あほぅ…////」

 幼い恋人は丸い頬っぺたを真っ赤に染めながら、

「こんなん明日もっと返して欲しくなるやん…」

 と最後の最後に最高級の言葉のプレゼントをくれた。


 [ 白石 Happy Birthday ]
白金
おたおめ白石!
金ちゃんといつでもラブラブでいてね!
12.04.14 up





きみといると体も心もぽかぽかです

 包帯に包まれた左手とそうではない右手が忙しなく動く。
 もこもこもこ、とそんな擬音がぴったりな感じにコートを着せられ、手袋をはめられ、最後にマフラーを巻き巻きされる。

「白石ぃー、そんなにせんでもぉ…」

 あっついねん、と金太郎は嫌々するようにかぶりを振った。

「あかん! そもそも金ちゃんの格好はいつも薄着過ぎるねん」

 風邪引いたらどうすんのや、と強く言い、ほい出来たで、とようやく満足したらしい白石に、金太郎は、ふぁい、と唇を尖らせて返事をした。

 口許まで引き上げられたマフラーの下から、

「白石、ホンマ心配性やっ」

 そう言い残し、寒空の下を駆ける。

「好きな子の心配したらあかんのんかー?」

 背中に向かって大きく掛けられた声に、

「あかんくないわー! あほぅ!」

 同じだけ大きな声で返す。

 堪えきれなくてへらっと頬を緩め笑い、白い息を吐きながら、体もだけど、それ以上に心があたたかいと金太郎は思った。


 [ おしまい ]
白金
季節びみょうに逆戻っていますが、冬のお話が思いついちゃったのであげます。
金ちゃんの、あほぅ、は白石への愛が溢るる、あほぅ、です。
きっとハートマークとか語尾についちゃう感じに聴こえる、あほぅ、です。らびらび。
12.05.01 up