HOME >>

Prince of Tennis

内緒話するみたいに

 夕暮れの空が黒く染まり出す部活後に、

「白石ぃ」

 突然、腰に強すぎる衝撃。
 力加減の下手くそな愛情表現に、ぐっ、と呻き掛けるも、カッコ悪い姿見せられるかっ、と根性で踏ん張る。
 視線を落として、胸元にぐりぐりと押し付けられる赤毛の頭に苦笑した。

「金ちゃんどしたん?」

 包帯を巻いていないほうの手でその頭を撫でて、

「なぁー、ワイ腹ペコで家まで持たん。たこ焼き食うて帰ろうや?」
「ええよ」

 鏡があれば自分甘過ぎやろ、と思う笑顔で応えた。

「ホンマ♪ よっしゃ!」

 そうすれば太陽のような笑顔が返ってくるのを、よく知っているから。





 そうして、二人並んで夜の公園。
 自分の分の熱々のたこ焼きを早々に平らげた金太郎は、じぃ、と白石の手元を凝視していた。

「…金ちゃーん」
「おん?」
「流石に食いにくいで」
「やって、ワイのもう無い…」
「いや、そりゃこん中に行ったからやろ」

 凄い勢いで食うからや、と言いながら、金太郎のお腹を指差す。

「白石ぃ」

 ああ、まただ。
 この呼び方はいけない。
 金太郎にこう呼ばれると、白石はまるで魔法にでも掛かったかのように、どうしても彼を甘やかしたくなってしまう。

「しゃーないな」

 乗り出すとか言う生温い表現はもう適切ではない、ほとんど白石の片腕に抱き付く格好でいる金太郎の口元にたこ焼きを運んだ。

「ほい」
「あーん♪」

 まだ先程のソースが残っている口がでっかく開かれる。
 完璧に餌付けだと思いながら、たこ焼きを預ければ、くりくりの目を細めて満面の笑みが咲く。

「うまーい♪」

「まだ欲しい?」
「うん!」

 そんなことを数回繰り返して、結局、白石のたこ焼きの半分は金太郎の胃袋へと納められた。

「白石、うまかった! おーきに!」
「どう致しまして」

 ご満悦の表情でお礼を告げる、丸い頬っぺたに残るソースを拭ってやりながら、

 ―― やっぱ自分、甘過ぎやな。

 もう一度、再認識。

 でもその思考は、突然アップになった金太郎の顔によって一時停止した。

 ちゅっ。

 静かな公園に響いた可愛らしい音と、唇に当てられた柔らかな感触にはもうお手上げだ。

(ホンマかなわんわ…)

 熱くなる頬を自覚しながら、小さな体を膝に抱き上げる。

「ん? なに?」

 平常心を装って問い掛ければ、

「たこ焼きいっぱいくれたお礼や」

 またちゅっ、とソース味の口付けが降った。

 まだまだ可愛いだけの口付けに、貪り応えたいのを鉄の理性で堪え、

「金ちゃん、今日うち来ん?」

 額を引っ付け合わせて提案してみる。

「……えっちなことするん?」

 天真爛漫純粋培養だけど、白石 【好きなひと】 のことに関しては察しの良い金太郎の頬がほんのりと赤く染まった。

「金ちゃんが許してくれるんなら、したいなー」

 少し長いサイドの髪を耳に掛けてやりながら、内緒話のように吐息とともに囁く。

「ひゃ…」

 ピクンと跳ねた小さな肩に気を良くして、顔を覗き込むと、

「行くぅ」

 大きな瞳をトロン…と潤ませて舌足らずなお答え。

「よし。ほな、行こうか」

 そのまま抱っこを維持して立ち上がると流石に嫌がられて、いややああ! おりるぅぅぅ、と騒がれたので、最終的に手を繋いで自宅までの道を歩いた。


 白石が先程あげたたこ焼きを返して貰うくらい金太郎を美味しくいただいて、ごちそうさま、と言うまで、あと数時間。


 [ おしまい ]
白金
新テニを見てから、突然ハマり、もの凄い勢いでコミックを買い集め、売り切れの巻は貸して貰い、キャラソンを毎日のように聴き、絶頂部長とゴンタクレルーキーが大好きになりました。
金ちゃんを甘やかす白石がとてもツボです。
12.02.01 up