変わらぬ日々を
【財前と金ちゃん】
長針と短針が一番てっぺんを指しカチリと重なる。
「ひかるぅー」
一つ年下の幼馴染みが声変わり前の幼い声で、甘えた響きを持って俺を呼んだ。
今にも頭が落ちてしまいそうな、うつらうつらしている危なっかしい姿に苦笑いをひとつ零してから、
「金太郎」
来い来い、と膝上を叩いた。
金太郎はパッと顔を綻ばせて、タックルの勢いで俺に抱きついてくる。
馬鹿力を支えきれず、後ろに倒れ込みながら、その背中に腕を回す。
「誕生日、おめでとうさん」
「おーきに!」
至近距離でお日様のように輝く笑顔を見つめながら、年取るんもええけど、もうちょいそのままでおってや、と今の関係を心地よく思いながら、赤い髪を数回撫でた。
【 おしまい 】
財前と金ちゃん
金ちゃんはソーラン節とか聴いていると財前への呼び方は 「光」 呼びじゃないんでしょうが、同じ小学校と言うところにキュンキュンなので、思わず名前呼びにしてしまっています。
12.04.01 up
ただいま餌付け中
【千歳と金ちゃん】
「あーん」
大きな口を開けて待っているのは、さながら雛鳥のよう。
では、これは餌付けだろうか。
白石あたりに知れたら、また千歳は金ちゃんのこと甘やかしてからに! 買い食いはあかんっていつも言うとるやろ! とあの端正な眉をつり上げるだろうことが容易に予想出来た。
「ちとせ〜〜」
なぁ、まだなん? ともともと我慢するのが苦手な金ちゃんが呼ぶ。
「ああ、すまんたいね」
耽っていた思考に描かれていた絶頂部長のおかんむり姿を脳内の端へと追いやって、爪楊枝を持ち直した。
「ちゃんと、ふーふーしてな〜」
金ちゃんのご希望通り熱々のそれに息を吹きかけて少し冷ましてから、赤い舌の覗く大きな口にたこ焼きを乗せる。
はふはふっ。
もぐもぐっ。
しばしご堪能して、んーーっ、と猫のようにその双眸が細められた。
丸い頬っぺたを両の手のひらで押さえて、たこ焼きの美味しさに頬っぺたが落ちそうと言わんばかりだ。
「千歳、たこ焼きめっちゃうまいでー♪」
「そりゃ、良かったばい」
もっと欲しいねん、とねだられるままに、金ちゃんの口元にたこ焼きを運ぶ。
それを繰り返して、5分も経たないうちに、千歳が持っていたトレイの中身は綺麗さっぱり空っぽになっていた。
ご機嫌で、ごちそうさま、と高らかに告げる幼い子を膝上に抱き上げる。
ソース塗れの口元を拭ってやった。
「金ちゃん、美味しかったと?」
「おんっ! 千歳、おーきに」
向かい合って笑うお日様のような笑顔が眩しくて、千歳は目を細めた。
白石に見付かっても、きっと今日くらいは許してくれるだろう。
【 おしまい 】
千歳と金ちゃん
千歳は金ちゃんに対して娘 (?) にあまあまのパパ (!?) みたいです。笑
12.04.01 up