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Prince of Tennis

凛と立つ。きみを守りたい

 寝癖とくせっ毛くるくるそのままのおれとは違う、いつも綺麗にブロー掛かっていた、彼がコートを駆ける度にさらさらと揺れていた髪が、コートに散っていくのを見ていた。

「どうだ? 俺様はどんな髪型でも似合うだろう?」

 不敵に笑いながら放たれたその言葉通り、短髪でもあとべはカッコいいと思ったから、
 おれはコクンと首を縦に振った。

 ただ他のみんなは居た堪れなさそうな、苦しそうな顔をしていたと思う。
 特にがっくんと日吉がそうだったかな?

 忍足はその長い指で、あとべの頬についている髪を払ってあげたあと、あとべと目を合わせてちょっと困ったみたいに微笑っていた。

 あと樺ちゃん。樺地は呆然としていた。
 そして何を思ったのか、あとべが使い終わったばかりのバリカンを手に取り自分の頭もあとべと同じように…いや、もともと短かった樺地の髪だから、あとべの比じゃないそれ以上の短さに丸めてしまった。

 これにはあとべのほうが動揺してた。

「樺地、ばっか! やめろ!」

 そう声を荒げて、でも樺地が言うことをきかなかったから (珍しすぎる)
 最後には深いため息をついてから、ちょっと泣き出しそうに目を細めて、樺地の頭を撫でていた。

 それを見たら、なんでかな?
 おれの涙が止まらなくなった。

 溢れる感情のままに体当たりの勢いであとべに抱きつく。

「おわっ! ジロー?」
「わああああん!」

 そのままわんわん声をあげて泣いたら、跡部は青の瞳をまるまると見開いて驚いて、それから困った様子で今度はおれの頭を撫でてくれた。

「負けて悪かった。お前も試合したかったのにな…」

 ぐすぐす言い続けるおれの背中を、あとべの温かな手が優しくぽんぽんと撫でる。

「あとべは負けてねぇもん…!!」

 負けてねぇもん!! と嗚咽で上手く言えないけど叫んだ。

「ありがとうよジロー」

 あとべは悔しくても、絶対に泣いたりしないから、

 いや、もしかしたら樺ちゃんと二人きりとかなら泣くかもしれないけど、

 おれの前ではきっと泣かないから、

 ヒーローで、ずっといてくれようとするから、

 だから、おれがかわりに泣いておこう。

 あとべの髪が元の長さに戻る頃には、この悔しさも乗り越えられると信じて。


 【 おしまい 】
ジロ跡と氷帝メンバー
【凛と立つ。強くやさしいきみを守りたい】

ジロ跡ベースですが、樺跡、忍跡も意識して書いたお話です。
相変わらず、べ様が愛されているのが好きで。
そしてべ様はそれ以上に氷帝メンバーを愛していると思うから、もっとキュンキュンします。
12.04.24 up