忘 れ な い で (サガ←カノ) オレはある日 勿忘草をサガに贈った その花の花言葉が‘わたしを忘れないで’だったからだ サガは喜ぶより先に、きょとん、と眸を瞬き、 わたしがカノンのことを忘れるわけないだろう、って 困ったように微笑った ううん、オレは、 オレ自身を忘れて欲しくないわけじゃなくって、 サガにほんとうのサガを忘れて欲しくないんだよ サガにお花を贈るカノンがお気に入りです。 どんなサガでもほんとうのサガならカノンは受け入れようと頑張ったんじゃないかなぁ、と… ってかカノンはサガに自分を押し殺して欲しくなかったんだろうなぁ、と思うのです。 愛 の カ タ チ (サガカノ) 昔からずっと不思議に思っていたことがある なんだよ わたしがいくら手を上げようとお前は殴り返そうとはしなかった… それがいつも不思議でならなかったのだ なんだそのことか どうしてだ わからないのかよ わからないから聞いているのだぞ 理不尽に何度殴られようともオレは兄さんが好きだから 殴り返そうなんて考え思い付きもしなかっただけだよ そうか うん、オレは馬鹿だから ‘素直’なのだろう そんなお前がわたしは好きだよ カノンは他の者を殴れてもサガだけは殴れないと思います。 逆にサガは他の者は殴れなくてもカノンなら殴れる、ってイメージです。 「カノンはわたしが護ってあげる」 サガはオレの体をぎゅう、と抱きしめ、そう告げる ううん、サガ オレは護られたいわけじゃない 首を横に振り、オレは答える 「オレはお前の立つ戦場に一緒に立ちたい」 ―― オレだってお前を護りたいよ この想いを伝えれば、サガは困る 双子座の聖衣はひとつしか無いのだから でもオレの望みはサガの隣に立つことだった オレの言葉に、やっぱり予想通りサガは困った表情をした でも柔らかにそっと囁いてくれた 「カノンはわたしの心を護ってくれているから大丈夫だよ」 カノンが居てくれるから わたしはほんとうの自分で居れるのだ その言葉の真意をちゃんと理解していなかった、と思い知ったのは サガの眸が血の色に染まり始めた頃だった カノンの前に居るときのサガはありのままの自分で、 それをカノンは普通のことだと思っていたけどサガにとっては特別だった。 サガがほんとうの自分を曝け出せるのはカノンの前だけだったんだろうと思うのです。 2人分の切符なら 片道分でも 迷わず躊躇わず君の手を取り、使えたのに 後悔も決してしなかったのに… でもわたしの手には、 いつも1人分の片道切符しか無かった 帰りの切符は無かったのだ だからずっと この切符は使えず終いだ だからずっと わたしもカノンも聖域 (ここ) から抜け出す列車には乗れなかった 子供の頃のサガ。 1人じゃ意味が無かったんだと思うんです。 サガもほんとうはカノンと一緒に居たかっただけなのかなあ、と思いながら 地上も 海底も 冥府も 天国さえも 君が望むなら全部あげる オレがほんとうに欲しいものは 地上でも 海底でも 冥府でも 天国でもなくて、 君だけなのだから ―― カノンは物欲がないイメージです。 世界が欲しかったのもサガのため、って感じだったので、そう思うのかもです。 サガの言葉に一喜一憂 オレはいつもいつもアホみたいに振り回されている 「単純馬鹿め、って思っているだろう?」 「いや、そんなことはない」 「嘘つくな」 「わたしは嘘など吐いていない」 ―― カノンならば、可愛いよ 極上の微笑みつきで返って来た言葉に ああ、いっそ 「馬鹿め」 と罵ってくれたほうが良い そうすればオレはこれ以上‘サガ馬鹿’にならなくて済むのに! そう思いながら机に突っ伏す 火照った頬に机はひんやり冷たかった 傍から見ればどちらも超絶ブラコンでアホアホですよカノンたん。 でもそこに気付かないってことは、やはりカノンのほうがアホアホなのか (笑) あ、もちろんサガ様は確信犯なのです。 天上の青の下 空より深い色彩の青い水面を、 寄せては引いていく波を、いつまでも見つめていた 海は嫌いなのに、 この頃のわたしは、どうしてもそこから離れ難かった それはお前が生きていることを、魂が感じとっていたからか いや、それともカノン。お前がずっと 水面の空を見上げていてくれたからだろうか ―― サガはカノンを探し続けていたと思うんです。 でもこっそり諦めもあって、あんな仕打ちをしたから逢うのも怖くて、 だからこそ本気で確かめることが出来なかったのかなあ、とか思います。 たとえ 逢えなくとも 声が聞けなくとも おなじ空の下に居る ―― そう思えれば良かった… でもオレが仰ぐ空はいつも水面の青だ 天上の青じゃないからお前とおなじ空じゃない だからこそ ずっとずっと淋しくて哀しいのだと思う |