ち っ ぽ け だ け ど (サガ←カノ) 多分さ オレの願い事はとてもちっぽけなものだと思う 「なあ、目ぇ開けて」 その眸にもう一度オレの姿を映し出してよ 白磁の頬を撫で、ぽつりと呟く 名前を呼んで、とも オレだけを見て、とも 一緒に居て、とも ましてや愛して欲しいなんて、そんな大それたことは言っていない それでもそんなちっぽけな願い事さえ叶えてくれないから 神様は ―― いや、オレの兄はとても意地悪だと思うんだ 多分、聖戦後。生き返ったカノンと目覚めないサガ。 「多くは望まない。自分を見てくれなくとも良い。それでもサガに生きていて欲しい」 そんなカノンたんです。 カノンはサガの居ない世界では生きたくないと強く思っている人だと思います。 暖春の候 暖かく柔らかい風が青銀髪を揺らす。 ぽかぽか木漏れ陽の中 サガは読書、カノンはお昼寝をしていた。 すよすよ、すぴすぴ カノンの規則正しい寝息がサガの読書のBGM しばらく緩やかに、穏やかに、そんな時間が流れていた。 しかしふいに頁を捲っていたサガの手元に影が落ち、 次の瞬間カノンの頭がサガの肩に 『ぽふっ』 と乗っかった。 「カーノーン」 本が読めぬ、と咎めるよう名前を呼んでみたが、返答は無い。 視線を動かし、隣を見れば、それはもう倖せそうに眠るカノンが居て、 サガは読書を諦めた。 栞を挟み本を閉じる。 首筋と頬をくすぐるようにふわふわ揺れるカノンの髪に軽く口付けを落とす。 カノンはもそもそと身動ぎし、居心地の良い場所を探り当てると サガの法衣の裾をきゅぅ、と握った。 「まったくお前は…」 無意識の内のカノンの行動は幼い子供のようだ。 起きたらからかってやろう、そう思いながらサガもそっと眸を閉じた。 急激にサガカノの砂吐き甘々話が読みたくなったので自給自足しました。 だって5月ですもの。双子の生まれた月ですもの! 「うむむっ」 双子座の聖闘士を半ば睨み付けるように凝視しながら 獅子座の聖闘士は唸っていた 「もの凄い形相だなーリア」 睨めっこ状態の2人を見守る射手座の聖闘士が楽しそうに言い、 「…可愛くないのだよ」 獅子宮の隣宮の住人兼恋人の乙女座の聖闘士は不満気に頬を 膨らませながらアイオリアの眉間の皺を指でつっついた 「…ううっ、やはりわからない!どっちだ?」 降参だ、と項垂れるアイオリアに双子座は紺碧の双眸を細め、 肩に掛かっている青い髪を優雅に払うと、アイオロスを見た 「はぁ、アイオロス。お前の弟は出来が悪い」 わたしとカノンの見分けもつかんとは、と呆れる双子座に、 ああっ!サガだったのか、とアイオリアが肩を落とした 「カノンは出来が良いと自慢か。サガ」 ニコニコと先程と変わらぬ表情でアイオロスが言う 「いや、カノンも出来は悪い」 自分の半身をばっさり斬り捨てておきながら 容姿はわたしとおなじなのだから申し分ないし、中身は可愛いが、と うっとりするサガ (貶しているのか?それとも惚気ているのか…?) アイオリアは頭上に疑問符を飛ばした 「なあ、それよりシャカと兄さんはなんでわかるんだ?」 「うむ。小宇宙の色が少し違うのだよ」 精進給え、と目を閉じたままシャカ 「うん?ちゃんと見ればわかるぞ?」 なんでわからないんだ、と首を傾げてアイオロス 「だから見てもわからないんだって…」 シャカの言い分はともかく兄さんの言い分は理由になっていない、と 脱力しながらアイオリア 「うーん…だってなぁ」 サガの顔をじぃぃーっと見つめて 「サガのほうが美人だし、髪艶々だし」 そう言いながらアイオロスがサガの青い髪をちょいちょいとつっついていると 「ほほう、オレの髪は艶々じゃないとそう言いたいのかアイオロス!」 その場に居なかったが話題に上っていたカノンが現れた 「ああ、カノン。おかえり」 カノンの姿を見とめ、ほわわんと微笑むサガ 「ただいま、サガ……じゃない!!ええい、離れんかそこぉ!」 サガの雰囲気に一瞬ほわわんと流され掛けたカノンだったが、 アイオロスと目が合うと、咄嗟に言葉をすり替え、叫んだ 「なんか怖いなあ、カノン」 サガにぴっとり引っ付いたままアイオロスが嘆く 「お前がわたしから離れれば問題ないと思うのだが」 サガは努めて冷静に ‘退け’ とアイオロスを押す それでもアイオロスはサガから離れないので、 カノンの狭い堪忍袋の緒がぷちーんと切れてしまった 小宇宙を爆発させ、どかーんとアイオロスを吹っ飛ばし、 サガをお姫様抱っこで抱きかかえて、カノンは十二宮を下って行った *** 「サガ!どうしてさっさと双児宮に戻らないんだ!」 石段を数段すっ飛ばしながらカノンが叫ぶように言い放つ 「人馬宮のほうが教皇の間から近いからだ」 カノン。振り落とされそうで怖いのだが、とカノンの首に腕を回してサガ 「なんだそれは!」 聖闘士の頂点に立つと謳われる‘ごーるどせいんと’のオレが サガを落とすわけないだろう!と先程の怒りも治まらぬまま、 ぷいぷいしながらカノン サガは、そんなカノンを宥めるように微笑み、 「人馬宮に居ればカノンに早く会えるだろう」 双児宮は遠いから淋しいのだ、と耳元で甘く囁くから カノンはもう何も言えなくなってしまい、 腕の中の兄を振り落とさないよう、ぎゅうと抱きかかえ直した このサガ様はどーしちゃったんでしょうか。いや、むしろカノンもどーしたんだ! でもカノサガでは無いです。これでもサガカノです。そしてロスサガぽい香りがしますね。 え、あれ?何が書きたかったんだろう、わたし… えー最初は 「サガだいすき!サガらぶらぶ」 って感じのカノンたんが書きたかったんですが、 これじゃあロスのほうがサガだいすきって感じだよ! ああ、でもサガがモテモテって良いなあ!ハアハア! サガを姫抱っこするカノンたんは可愛カッコいいと思います。 獅子乙女はロス兄出すならリアも出さなきゃ!と。そしたら乙女もちょこちょこ引っ付いてきたのです。 弱音を吐いたって良い 泣きたいときは胸くらい貸せる 辛くて、どーしようもなくなったら逃げ出したって良いよ でもお前はどれも選ばない いつも偽物の微笑みで本心を隠すだけだ お前がそうやって偽物の‘サガ’を演じ続けていたら いつか本物のお前が消えてしまうぞ! カノンはそう言い、涙も流せないわたしの代わりに泣いてくれた 「でもお前が泣けなきゃ何の意味もないんだ…」 サガに我慢して欲しくないカノンたん。 子供の頃のお二人です。 カノンの顔をまじまじと見つめながら 「カノン。お前は人魚姫のようだな」 「はあ?」 サガはいたって真剣にそう告げた。 「泡になって海に融けてしまったかと思ったのだ」 「兄さん、本読み過ぎだ」 サガの言葉にカノンは眸を丸くし、 呆れたようにため息交じりに笑ってみせる。 それでもサガは真剣な、その表情を崩すことなく、言葉を続けた。 「そうだろうか。あながち間違って居ないと思うのだが」 わたしの前から消えたではないか、とサガは静かに告げ、 カノンの腕を引き、抱きしめる。 カノンはサガの腕の中で童話の、 哀しい末路を辿った姫を思い出してみた。 故郷を捨て、美しい声を捨て、自分の命が助かるとしても それでも愛しい人を殺せなかった人魚の姫 馬鹿じゃないか、と思う。 声が出なければ王子の傍に行けてもコミュニケーションも取れない。 大好きな歌も歌えない。 ああ、でも ―― そうか… 声が出ても言葉が届かなければ意味がない。 どれだけ叫んでも想いが、言葉が、サガに伝わらなかった頃の自分と人魚姫が すこし重なった。 言われて見れば、自分に似ているところもあるかもしれない。 サガに振り向いてもらえなくて ‘カノン’ は一度死んだのだし そうしてサガが死んで再び聖域に戻ってきた。 「……でも…今はオレもお前も居るじゃないか」 人魚姫はもう王子様には逢えなかったんだぞ、とカノン 「それでは今。 もしもわたしがお前を見ていなかったら 泡になって消えるか、カノン?」 サガはカノンを真っ直ぐに見つめ、意地悪すぎる仮定をしてくる。 カノンはムッと口をへの字に曲げた。 そして今度は哀しげに眸を伏せた。 「わからない。…けど哀しくて泣いてしまうな、きっと…」 泡になると言うか ―― 泣いて泣いて干乾びてしまうかもしれない 肩口に額を擦り付けてくるカノンを抱きしめ、 ではお前が干物になってしまわないよう、ちゃんと見つめていよう 囁きながらサガはカノンの額にそっとくちづけた。 羽根のように触れる、優しいくちづけを受け止めながら 「干物になって欲しくないならちゃんと唇にしろよ、兄さん」 カノンが顔を上げ、不満気にごねた そしてこのあと 「ちゅぅっ」 とな。 サガはカノンがどうして欲しいか (チューするなら唇のほうが喜ぶ、と) わかっているけど カノンから求めて欲しいので意地悪です。 地上と海界の神に愛されしカノン。 でもな、サガ。 あの頃のオレはお前に愛して欲しかったのだ。 神であろうと、他のものはどうでも良かった。 お前の愛だけ欲しかった。 今はどうなのだ? うーん、そうだなあ…… 今は叶うなら女神とサガに愛されたい。 ……間が開きすぎだ。減点。 うわ、ひどっ。 っていうか、サガ。 お前、間が開いたことより女神の名が先に出たことに怒ってない? ふ、恐れ多いことを。 しかしカノン… ん? その言い草だと、ワザと女神の名を先に出したようだな。 ……いやいやいや、偶々だ。気のせいだ、兄さん。 良いよ、カノン。 お前の望み、叶えてやろう。 今夜寝室のベッドの上でたっぷりと、な。 ああ、何処かで見た気がする、こういうネタ…。 サガは独占欲強いのですよ (断言かい) 眩しい陽射しに目を細め、大きな欠伸をむにゃむにゃ一つ。 カノンは寝間着姿のまま、ペタペタ足を鳴らしながらダイニングに向かった。 扉を開けると、一足先に起きていたサガがコーヒー片手に新聞を読んでいて、 おはよーと、まだ半分ねむねむモードのカノンが挨拶。 お前はおそよーだがな、と言いたげなサガの視線をスルーして、 テーブルに残っている広告に手を伸ばす。 一枚広げて 「お、今日は卵が安いぞ、サガ」 とカノン。 バサリと新聞が閉じる音がして、 「ではオムレツでも作ろうか」 好きだろう、カノン、と聞かれたので 「ふわふわ半熟にしてくれ」 可愛らしくコクコク頷き、答えてみた。 ああ、所帯染みた会話だなあ、と思いつつも カノンはこういう時間が好きだった。 倖せ気分に浸りながら、ふと、ケチャップあったか、と思い、席を立つ。 カノンが冷蔵庫を覗きに行くと、今度はサガが広告を一枚手にとった。 サガ、サガ。ケチャップがないぞ、と戻ってくるカノン。 サガは視線を上げ、カノンを見つめる。 寝癖頭のまま、カノンはきょと、と首を傾げた。 その無防備な姿に苦笑し、空いているほうの手でカノンを引き寄せ、囁いた。 「買い物も一緒に行こうか、カノン」 至近距離でニッコリ。オマケにカノンの唇を軽く啄ばむ。 カノンはサガの膝に乗り上げると、スルリと首に腕を回し、 先程のサガと同じようにニッコリ。 「兄さんがも一回チューしてくれたら考えてやっても良い」 サガを誘った。 朝っぱらからイチャイチャ。 朝のお話って好きです。素が出ると思うから (笑) 「ふあ、おはよ…」 大きな欠伸をひとつし、寝惚け眼を擦りながらカノンが言う。 カノン、欠伸をするときは口を手で覆え。 大口開けて、阿呆に見えるではないか。 あ、だが、その眼をこする仕草は大層可愛らしくて良いぞ。 わたしが真剣にそう言うと、 むしろお前がアホアホだ とカノンは盛大に呆れた。 「お?おかえり。早かったな」 ある日はおたまを片手にキッチンから、 またある日は自室で洗濯物を畳みながら、 さらにある日はリビングのソファからがばっと上体を起こし、口の端の涎をあたふたと拭いながらカノンが言う。 カノン、こんなところでうたた寝など、風邪をひいてしまう…。 わたしが心配してそう言うと、 カノンはふわりと微笑み、素直に小さく頷いた。 「サガ、おやすみ」 濡れた髪もそのままにカノンが言う。 カノーン!折角の美しい髪が痛むだろう…! わたしが大いにそう嘆くと あーうるせぇ!わかったよ… とカノンは渋々ドライヤーを手にとった。 「お前と過ごす、そんな他愛もない日常がとても好きだよ」 穏やかに、心から、そう言えば、 カノンは驚いたように眸を瞬き、慌てて横を向いた。 表情がうかがえない…。 それでも唯一見える、赤くなっている耳をじーっと見つめていると、 『じゃあそんな他愛もない日常をずっとずっとくれてやる』 と小さな声が、優しい言葉が、 わたしの耳に届き、心を満たしてくれた。
サガもカノンたんのこと大好きだよ、と主張するための小話 (笑)
倖 せ で す か ? (サガカノ)天から問い掛け、双子の弟はこう答えた。 ああ、もちろん。だってサガと居るからな。 サガが居るからじゃなくて‘サガと’居るから ―― カノンは大きく頷き、ニッコリ満面の笑みを浮かべた。 天から問い掛け、双子の兄はこう答えた。 ああ、当然だ。何故ならカノンと居るからな。 カノンが居るからではなく‘カノンと’居るから ―― サガも大きく頷き、ニッコリ極上の笑みを浮かべた。 サガとカノン。二人で居るから倖せなの。 互いが居るだけじゃ駄目。 一緒に居るの、と互いに意識し、想い合ってこそ倖せなことだと思うのです。 どうしようもない咎人だったと思うけど 最期くらい あいつの心に温かなものが降り注ぎ、安らかな眠りが与えられますように 光届かぬ海の底で、祈っている |