ミロ誕と双子の小話 (サガカノ+ミロ) まず最初に、 「ミロ、今日誕生日だろう? やる」 ニッと明るく微笑ってワインを片手に天蠍宮を訪れたのがカノン。 美味いぞ。カミュとでも飲むと良い、と言ってそのまま海の仕事があるからと十二宮を下って行った。 程無くして次に現れたのは、 「ミロ、誕生日おめでとう」 にっこり優しげに微笑って高級そうな木の箱を両手に持つサガ。 良かったら使ってくれ、と蓋を開けたそこにはワイングラスが二つ並んでいた。 「ありがとう、サガ。割らないように大事に使うぞ。あっ、カノンと相談して買ってくれたのか?」 「…なんのことだ?」 「えっ?」 頭上にハテナを飛ばしながら返されてしまって、質問をしたミロのほうもキョトンとする。 「いや、先に来たカノンがワインをくれたのだ」 だから、てっきりな、とミロが頭を掻く。 「ああ、なるほど」 サガはふふっと何処か嬉しそうに笑った。 「カノンとは何も相談しなかったのだが、美味しいワインがあるのならわたしのプレゼントもすぐ活躍出来そうで嬉しい限りだ」 「なんというか、お前たちはすごいなあ」 ミロは双子の繋がりの神秘に驚きという贈り物を貰ったような気持ちにもなりながら、心から、ありがとう、と笑った。 ミロおめでとう!! ハーデス十二宮編のミロとカノンたんとのやり取りとか、カミュさんとの友情とか大好き!! 15.11.08 up 任務先から聖域に帰還。上への報告を手早く終えて、サガは双児宮の居住区に戻ってきた。 すぐに、ただいまカノン、と声を掛けたけれど、そこは人の気配なく静まり返っていた。 サガは聖衣箱とマントを所定の位置に戻し、きょろり、と辺りを見回す。 カノンの小宇宙を探り当て、双児宮の裏庭に向かった。 「カノン?」 「…あっ、サガ!!」 色とりどりの花が咲き乱れる庭に踏み込めば、しゃがみ込んでいたカノンがぱっと顔を上げてこちらに駆け寄ってくる。 飛びついて来たひだまりと花の香りのする片割れをその場で踏ん張って抱きとめた。 「おかえり。怪我してないか?」 「ただいま。わたしを誰だと思っている?」 「んー、じぇみにのごーるどせいんと様?」 「その通りだ」 「あと、オレのたったひとりの兄さん?」 「それも正解だ。怪我などするわけがないだろう?」 「それもそっか。良かった」 「ふふっ、カノン、花の匂いがする」 温かな体を抱きしめながら、首筋にすりっと鼻先を寄せる。 「くすぐったい、サガ」 ずっとここにいたからな、と微笑いながら、カノンは首をすくめた。 そのままサガはカノンごと、緑の絨毯に寝転ぶ。 心地良い風が吹き、さわさわと周りの花たちが揺れた。 「サガ、どうした?」 疲れたのか、とカノンがその顔を覗き込むと、サガはますますカノンの体を抱きしめる。 「……そうだな…すこしだけ」 声のトーンを落として目を閉じた兄の背に腕を回した。ぽんぽんと優しく叩く。 幼子をあやすような弟の手の動きにサガが瞼を持ち上げた。ふわりと微笑み、カノンの頬にちゅっと口付けを落とす。 カノンの頬がほんのりと赤く染まった。 「…っ、なんだよ?」 「カノンが可愛いから、つい」 「な、なに言ってんだ、バカ」 綺麗に微笑むばかりの兄にカノンの恥ずかしさは加速する。 思わずサガを突っぱねてそのまま立ち上がろうとした。 すると、それに気付いたサガの腕が伸びてきた。 「カノン、行かないで?」 「…っ、べつに行かないけど」 「ずっと、どこにも…行ったら、…嫌、だ……」 消え入るように零れた兄の言葉とそのあとすぐ聴こえてきた寝息に、カノンはきつく眉根を寄せた。 「どこかに行くのはいつも兄さんのほうだろ…」 もちろん、それが仕方のないことだと分かっているけど。 カノンはチリチリと胸を焼く痛みを振り切るように、先程まで自分が座り込んでいた場所に腕を伸ばした。 サガがここに現れる間際にちょうど完成した花冠を眠るサガの蒼い髪にそっと乗せる。 カノンはサガの隣にもう一度寝転がると、祈るようにサガの手ごと自分の手を握った。 どうか、この優しい兄が傷付くことの少ない世界でありますように。 アテナを信じれない自分は誰に祈れば良いのかわからない。 それでも願った。 自分がここにいる限りきっとそれは叶わないと知りながら。 |