ポッキーゲーム (サガカノ)


「サガよ、今日はポッキーゲームをする日らしい」
「ポッキーゲームとはなんだ?」
「なんでもこのお菓子を両端から食べていき折ったり先に口を離したものが負けらしい」
「ふむ、なんだかよくわからんゲームだな」
「そう言うなよ。せっかく老師がポッキーくれたのだし、とりあえず、やってみよう」

 何故、老師がそんな遊びを知っているのだ?と言う無粋なツッコミは心の中にしまっておいた。

「ん」
「カノン…」
「ひゃんだ?」
「いや、なんでもない」

 絶対にこれは双子の兄弟でやるゲームじゃないぞ、と言う二回目のツッコミも心の中に封じておいた。


 ポリポリ……。


「ひゃが、ひかい(サガ、近い)」
『そういうゲームなのだろう』
「てめっ、なに小宇宙通信使ってやがる!!」

 カノンが叫ぶと同時にポッキーを全部咀嚼した。

「あーっ!!」
「わたしの勝ちだな」
「駄目だ!! 納得いかん。もっかいやるぞ!!」
「納得も何も先にポッキーから口を離したのはお前だ」
「うぐっ、と、とにかくもう一回!!」

 ずいとポッキーを突き付けてきたカノンを抱き寄せた。

「えっ、ちょ?」
「もう一度するのだろう、ポッキーゲーム?」
「えっ、いやっ、するけど、こんなに最初から近付いておく必要はない気がする!」
「最初に離れているとすぐポッキーが折れそうでさっき気が気でなかったのでな」
「そ、そうか。なるほど! 確かにそうかも」

 カノン、お前はちょっとチョロ過ぎるぞ、とサガはとうとう三回目のツッコミもしたくなったがやはり口に出すのは止めておいた。


 ポリポリ…。
(ちょっと躊躇うように一旦止まってまた)
 ポリポリポリ……。


 ちゅっ。


「……なぁ、サガ」
「なんだ?」
「最後までいっちゃったけど、ていうか口も当たったし、この場合どっちが勝ちになるんだ?」
「さてな」

 もごもご口元を押さえたカノンが問い掛けてきたので、にっこりを微笑んで言ってやった。

「お前が勝つまで続けてもわたしは構わないぞ?」
「待て。おまえ、負ける気無いだろ?」
「負けるつもりで勝負などしてもつまらんからな」
「いやいや、ずっとポッキーゲームしてキスをしよう、みたいに聞こえるわ…!!」
「なんだよく分かったな」
「えっ??」
「カノン、この箱の中身が無くなるまで引き分けのポッキーゲームをしようか?」

「……する////」



後日、またポッキーを貰ってくるカノンたんがいるのでした。めでたしめでたし。
15.11.11 up















 眠れない夜に (サガカノ)


 カノンが海界への仕事で、双児宮を空けてからそろそろ三日目。

 二つ並べたキングサイズのベッドはひとりだと広過ぎる。
 片割れがいるときはぱたぱた脚を遊ばせたり転がったり寝相が悪かったりして狭いと思うときすらあると言うのに不思議なものだ。

 サガはそんなことを考えながら、なかなか寝付けないでいた。

 流し読みしていた小説を閉じサイドテーブルに置く。
 ホットワインでも作ろう、とキッチンに向かうと、その途中で頭の中にふわりと馴染み深い小宇宙が流れこんできた。

『サガ』
「カノン?」
『起きてたか?』
「わかってテレパシーしてるのではないのか?」
『…まぁ、そうなんだけど。なんかさ、眠れない』
「あったかくして早く寝なさい」
『あーもうッ、だからっ、そうしてるけど眠れないんだよっ!』
「それは困ったな。なら、ハーブティーでも飲んで寝なさい」
『…なんだその子供扱いは?』
「よく眠れるぞ。ハチミツ入れて飲むの好きだろう?」
『そりゃ好きだけど。サガはホットワイン飲んでるんだろ?』
「…よくわかったな」
『わかるさ。オレはサガの弟だから』
「そうだったな」
『オレもホットワイン作ろうかな』
「お前は普通に飲みだすからやめなさい」
『むー』

 サガはカノンとの小宇宙通信を続けながら、片手鍋に赤ワイン、クローブ、シナモン、スライスしたオレンジ、黒砂糖などの材料を投入してゆっくりと温めていた。

『サガのホットワインとかハーブティーが飲みたい…』
「帰ってきたらいくらでも作ってやる」
『ん…』
「早く帰っておいで」
『う、ん……』
「おやすみ、カノン」

 ふっと途切れたカノンの声にどうやら眠れたようだと悟る。

 もし明日もまだ弟が双児宮に帰ってこなかったら、そして、また自分の寝付きが悪かったら、今度はカノンの好きなハーブティーを淹れて眠ろうとサガは思った。

 ただこのもしもの話は、明日の夜にはカノンのあどけない寝顔が自分の隣にあって、きっと実現することはないだろうとも予感していた。



自分の寝付きの悪い日に書いたもの。
15.11.12 up















 風邪っぴきと飴玉 (サガカノ)


萌え語りです。

風邪気味でコホコホとサガ様が咳き込んでいたら、カノンが大丈夫か?て心配そうに顔覗き込んでくるから、(あまり傍にいるとカノンにも伝染るから)心配しなくていい、てサガ様はちょっとカノンを避けるんですね。
でも、カノンたんはやっぱりお兄ちゃんが心配で、サガ、のど飴やるから、て言い出して、それが自分の口の中にあった飴玉を口移しでサガ様にあげるという方法で。
ちょっとビックリしたサガ様は、こらカノン!てカノンを引き剥がそうとするんだけど、サガ、顔熱い。オレももう風邪うつっちゃったから一緒だな、てもっとちゅっちゅっしちゃうサガカノが見たいです。



15.10.28 up















 堪え切れない嗚咽 (サガカノ)


 二人きりの双児宮。 時折、夜になると漏れる嗚咽が薄壁一枚越しに届いていたから、ひとりで泣いているのを知っていた。

 だから、

「我慢せずに思いっきり泣いても良いんだぞ?」

 明るい昼間にそう伝えたことがある。

 けれど、

「カノン、わたしは泣いてなどいないよ」

 自分の心が壊れていくのも分からず不思議そうに首を傾げていた兄に、もっと他にどんな言葉をかけてやれば良かったのだろう?
 海の底に来ても未だに分からないでいる。



下のお話と対です。
15.10.28 up















 もう枯れたと思っていたのに (サガカノ)


「カノン… 、カノンっ」

 額を引っ付けて指を絡めて、ぽろぽろ零れるそれを見ていた。

「そんなに泣くと干からびるぞ?」

 仕方ないから、絡めた指を一旦解いてコシコシと拭いてやる。

「すまない。嬉しくて…」

 止まらないんだ、と兄は泣きながら綺麗に微笑う。
 その笑顔にこちらの目頭まで熱くなってしまってちょっと困った。

「サガ…」
「なんだ?」
「おまえが我慢せずに泣ける世界になってオレはそれがすごく嬉しい、と思う…」

 うっ、おかしいな。何を伝えたかったのかちょっと分からなくなってしまった。
 でも、もどかしく思いながら、精一杯伝えてみる。
 兄はきょとんと涙に濡れた双眸を瞬いたあと、オレをぎゅうぎゅうに抱きしめてきた。

「わたしはおまえがこの腕の中にいることが嬉しい」
「うん、…うん、サガ」

 隙間ない抱擁からトクトクと伝わるサガの心音に今度こそオレの涙腺も壊れてしまったようだ。
 サガの肩に顔を埋める。
 泣き顔を見られたくないので苦しすぎる腕の力も今は都合が良い。
 ああ、どうか、もう二度とこの優しい音がオレの手が届かない場所で止まったりしませんように。



上のお話と対です。
15.10.28 up















 双子の髪のお話 (サガカノ)


 小話というよりただの萌え語り。

 手強い相手とのバトルで(手合わせでも可)サガ様の髪がばさってちょっと切られて、サガ様は特に気にせず相手を倒すんだけど、終わったあとにカノンたんがすごい怒った表情でこっち見てるもんだから、サガ様は首を傾げながら

「カノンどうした?」
「髪…」
「ああ、少しな」
「…油断すんなバカ」
「大したことはない。そんなに怒らなくても良いではないか?」
「……む、べつにおこってない!!」
(…怒ってるではないか)

 ってその日はカノンたんずっと機嫌悪い。

 そしたら、今度はべつの日にカノンたんが同じように髪ちょっと切られちゃって、

「カノン、髪が…」
「ああ、そういえばちょっと切れたな」
「せっかくの綺麗な髪なのに…」
「……」
「…? どうした?」
「オレが機嫌悪かったのがよく分かるだろ!!」

 ってカノンたんまたぷんぷん。サガ様はぽかん。

「カノン、この前はすまなかった。これからは気をつけるとしよう」
「…わかったんならいい。オレもサガの髪好きだ」

 って最後にやっと素直に理由言ってデレるカノンたんが見たいです。
 でも、それと真逆に喧嘩してて思わず髪の毛引っ張ったりしてブチブチってめっちゃ抜けて、痛いわ!!って言い合ってるサガカノもなんか可愛いと思う(笑)



1510.31 up

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