そ ん な 、 ふ と し た 日 常 の ヒ ト コ マ


「そもそも私は‘待つ’という行動が嫌いだ!」

 それは突如
 シオンが憮然な面持ちで云った言葉。
 顔にびしっと指先も突きつけられておったの。

「そうじゃの」

 そんなことは知りすぎるほど知っておる。
 だから適当に相槌を打っておいた。

「ええい、童虎!ちゃんと聞け!」

 しかしわしの態度がシオンは不服だったらしい。
 力任せに、ぐきり、と首を回され、視線を無理やりに合わせられた。
 痛いのう…。

「聞いておるわ。待つのが嫌いなのだろう」

 首がズキズキと痛みを訴えてきたが、手を振り解けば、短気なシオンのことだ。
 きっと怒るだろう。
 仕様のないやつじゃ。
 そんな風に思いながら
 変な風に首を捻ったままの状態で、会話を続けた。

「そうだ。それなのにお前は、私を243年間も待たしおって」

 ぶつぶつと小言のように聞かされる言葉。
 シオンよ。この会話は、新たな命を与えられてから既に10回以上はしとる。
 そしてわしが返す言葉も決まっておろう。
 毎度、毎度、懲りんの。
 それとも
 わしの言葉が聞きたくて、云うのであろうか。

「つまり、わしはそれだけ愛されているということかの?」

 未だにぶつぶつと文句をたれているシオンの顎を掬い、問うてみる。
 白い頬がぼん、と紅潮した。
 やはり云って欲しくて、小言をたれていたらしい。
 自覚があるのか、それとも無意識なのか。
 ま、どちらにしても可愛いもんじゃ。

「ううう、自惚れるな!」

 シオンは薄紅の瞳をつり上げ、キッとわしを睨み付けてきたが、表情と言葉の端々に動揺が見られて、迫力なんて微塵も感じられなかった。

 むしろ、シオンがムキになって反発すればするほど
 わしの心は満たされていった。


end



日常。いつもの風景。童シオは倖せな話が好き。


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