私達の時代では青空を見ることなんて、叶わなかった。
 見上げた先は、いつも灰色と白の世界だった。

 いつか青い空も見れるかしら?

 図書館で見つけた本に載っていた晴天を指差し、そんな疑問を投げ掛ける。
 兄貴は、いつも笑顔で 「見れるさ」 と応えてくれた。

 根拠は?

 私はいつも可愛くない返事を返して、優しい兄貴を困らせていた。
 いつか2人で青い空を見に行こうな、と兄貴は言った。
 ふん、と小さく鼻を鳴らして、しょーがないから指きりをしてあげたんだよ。

 いつか
 いつか
 一緒に――

「嘘つき」

 小さく呟いた科白は、誰の耳にも届くことなく空へ消えた。

 嘘つき
 嘘つき
 嘘つき

 一緒に見ようって言ったのに――

 カイル達に同行して、私は本に載っていたあの空を見ることが出来た。

 白でも灰色でもない、快晴の空はとても広く、青く、綺麗で――
 自分がとてもちっぽけな存在に感じられたんだ。

「あーあ、眩し…」

 ちっぽけな私に出来ることは、次から次へと枯れることなく溢れる涙を必死に堪えることだけだった。

 兄貴は空にいるのかな?
 其処から私の姿は見えますか?

 本当は私もそっちに逝きたいんだけど、此処は貴方が命を懸けて護った世界だから
 もう少し頑張って、この大地を踏みしめていてあげるわ。

 でも、疲れたらそっちに逝くからね。
 優しく微笑んで、お出迎えしてちょうだいよ。


     大馬鹿者な兄さんへ
     超絶かわいい妹より


END



04.07.xx


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