彼女の瞳には不思議なことに小さな花が咲いている。
それはピンク色の花弁を持つ花のようで、幸福を運ぶというクローバーのようにも見える。
「ニア」
「はいっ、なんですか? シモン」
名前を呼ぶとニアがこっちを向いてくれた。花の中に自分の姿が映し出される。
「あっ、いやっ、ごめん。用はなかったんだけど」
おれはわたわたと手を振った。
「ふふっ、変なシモン」
ニアは呆れたり怒ったりせず、ふんわりと微笑ってくれて。
瞳の中の花はやっぱり、幸福を運んでくれるクローバーかもしれないと思い出す。
ただそれは、緑色じゃなくて新種のピンク色。きみだけの柔らかくて可愛くて…、優しい色。
[ end ]