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PERSONA2

二人のためにひとつだけ咲く

「うーん、この時期って大体雨よね」

 手のひらに雨粒を掬いながらどんより空を見上げてみると

「舞耶姉」

 少し怒気を含んだ声と腕に力強く肩を抱かれた。

「頼むから、濡れるから大人しくしてて」
「はーい」

 良い子のお返事をしてみて、鳶色の眸を仰ぎ見る。
 どちらともなく二人で微笑い合った。

 雨の日はちょっと淋しい感じだけど
 雨の日にひとつだけ咲く傘には君といっしょに入れるから倖せね。

 梅雨が明ける君の誕生日には、
 淳クンと栄吉クンとリサちゃんを誘って海に行こうね。

 花火もしようね。

 いっぱいいっしょにいようね。

 ―― もう叶わない世界でやさしい君の夢を見ている


 [ end ]
達哉×舞耶
たっちゃんと舞耶姉のあいあい傘が書きたかったもの。
舞耶姉のお誕生日 (一日遅れ) に暗い話を書いてしまったものだ…。
07.07.05 up






傷の舐め合いではなくて

 背中合わせに座り込んでぽつりと一言

「あのさ、わたしたちって共犯者なんだよね…」

 その通りだ、と思いながら
 ひとりじゃなくて良かったと思ってしまうから
 たっちゃんにも舞耶ネェにも顔向け出来ねぇ

 でもこいつがひとり苦しむんじゃなくて良かったな、とも思って、
 この想いは、あの二人に顔向け出来ない想いなんかじゃないと思った


 [ end ]
栄吉+リサ
表には決して出さずにリサを大事にする栄吉も好きです。
傷を、火傷を負っても達哉と舞耶姉は栄吉とリサのことを責めたりしないなとも思って
だから余計二人は苦しくもあり安堵もありなのかな。
でもあの二人の罪もひとりじゃなくて良かったね、とも思いながら書きました。
07.06.26 up






大切でした

 消えない火傷に、
 癒えない孤独と淋しさを隠して
 きれいに、とても綺麗に
 微笑いかけてくれるあなたが世界中の誰よりも ――


 [ end ]
達哉→舞耶
彼の知る罪の舞耶姉がもう何処にも居ないとすれば‘大切です’にはきっと出来ない。
罪の舞耶姉を見ているとほんとうに綺麗に微笑うひとだな、っていつも思うのです。
07.06.26 up






ヒーローは君だけ

 すう、と目一杯息を吸い込み

「助けてくれてありがとう」

 青い青い海に向かって声を大にして言うわ

 私の未来をつくってくれた向こう側の君にきっと届くと、
 強く信じながら ――


 [ end ]
達哉←舞耶
舞耶姉の中では達哉が言った言葉 <この海を通じて繋がっているから> がきっと支えだと思う。
07.03.20 up






涙腺は強いはずだった

 ランク8に成長し、変異魔法も覚えた舞耶姉の最強ペルソナ
 美しい青銀の光を放つ月の女神を見つめて、俺は小さく呟いた。
 ―― ……良かった、と。
 こちらの世界のアルテミスは犠牲の魔法を習得しない。
 向こう側の世界で舞耶姉があの魔法を使わなければならない状況に陥る度に、
 俺は自分が許せなかった。

 怖いのは、
 背中に傷を受けたあのときのように、たいせつなひとをまもれないこと ――

 無力なことが 何も出来ないことが とても怖い。
 記憶を辿れば、あの魔法は舞耶姉の運命を示唆していたようにも思えて背筋が凍える。
 寒気にぎゅっと肩を抱くようにすると

「達哉クン?」

 優しい声が掛けられた。
 肩を擦りながら 「なに?」 と振り向く。

「あのねー。お腹空いちゃったからラーメン食べに行かない?」

 言葉の通りグーと鳴るお腹を押さえて、てへ、と悪戯っぽく笑う彼女に
 後ろの兄さんが天野君…と呆れ顔とため息ひとつ。
 そんな何気無い日常が嬉しくて嬉しくて泣きそうだ。
 唐突に舞耶姉を抱きしめたくなる。

「舞耶姉…」
「うん?」

 ―― ずっと微笑っていて、

「なんでもない」

 ほんとうに言いたかった言葉は飲み込んで首を振った。

「え〜?なぁに?気になるな〜」

 舞耶姉が不思議そうに首を傾げるけど構わずラーメン食いに行こ、と続ける。

「うん!行こう行こう!」

 誤魔化すための答えだって舞耶姉は気付いたみたいだったけどそれ以上何も聞かないでくれた。
 明るい表情をもっと眩しく輝かせて舞耶姉は俺の手を引く。
 その手が柔らかくて温かくて、俺はまた泣きそうになってしまってどうしようもない。
 ああ、俺はいつからこんなに涙腺の弱い男になってしまったんだろ。
 この世界が眩しくて、あなたが大切で胸が苦しいよ…舞耶姉… ――


 [ end ]
達哉×舞耶 (リバ ?)
わたしが書くと達哉が攻めになりません。受けくさい!
むしろ舞耶達の勢いです。てか舞耶姉は総攻め的に強い気もする!(笑)
あ、いちおう下に続いています。でも下のカプは克達 (おい)
07.03.14 up






涙腺は強いはずだった 2

 ラーメンと言えば向こう側ではしらいしだったなぁ、と懐かしく思いながら
 達哉はとんこつラーメンをすすっていた。

「達哉」

 これでもまだまだ育ち盛りなので一緒に注文した餃子にも箸を伸ばす。
 すると達哉の丁度真向かいの席に座っている克哉に声を掛けられた。

(そういえば…)

 豪快に白飯をかっ込む度に向こう側の兄さんには、
 『…おい達哉。お前それ以上伸びる気なのか』 と真顔で聞かれたな、と思い出す。
 達哉はまた懐かしくなりながら、なに、と聞き返した。

「…大丈夫か?」

 克哉はそう続ける。
 達哉は兄の心配が何を指しての、大丈夫か、なのか解らなくて、
 餃子を摘み掛けた体勢のまま固まった。
 となりのテーブルでは舞耶とうららがお喋りに花を咲かせ、
 カウンター席ではパオフゥが野球中継に夢中になっている。
 克哉は少し困ったように笑って腕を伸ばすと、
 餃子GETのために身を乗り出していた達哉の眉間を突っついた。

「さっきずっと八の字だったろう」

 今にも泣き出しそうに見えたぞ、と克哉は指摘する。
 先程の思いは舞耶だけではなく兄にも見透かされていたらしい。
 俺ってそんなに顔に出るんだ、と独り言のように呟きながら手を引っ込め頬に触れる。
 そんな達哉の反応に克哉は、

「ちゃんと見ているからな」

 そう答えた。

「ちゃんと…?」
「そう。ちゃんとずっとだ」

 ―― …お前がまたひとりで苦しむことのないように

 くしゃりと頭を撫でられると共に告げられた克哉の言葉に、
 達哉はまた泣きそうになって、

(やっぱ俺、涙腺弱くなった…)

 ラーメン食ってて助かった、と思いながら鼻をすするのだった。


 [ end ]

罰克哉×罪達哉
上から続いていますね。
いや、ラーメンとかうどんを食べると鼻が出ますよねーって話です。
勿論ほんとうは泣きそうになって鼻が出たタッちゃんなのでした。
07.03.14 up






あなたが好き

 わたしはずっと恋をしている


「…あのね情人。情人ってね。恋人って意味なの」

 わたしがそう告げたときの情人は顔は忘れたくとも忘れられない
 薄々わかってたんじゃないかな、とも思うんだけど
 面と向かって言われると改めて驚いちゃったみたい
 わたしなんかよりずっと綺麗な鳶色の眸をぱちぱち何度も瞬いてた
 驚いた情人も可愛いなって思うの半分、
 そんなに驚かなくてもって思うの半分、
 ちょっと胸が痛かったかな…

「あは、あはは…びっくりした?」

 胸の痛みを誤魔化そうとして、わたしはどうやら失敗してしまった
 上手く笑えなかったみたい
 情人は何にも言わずにわたしの髪を撫ぜてくれた

「情人……」

 よしよしって撫でてくれる手が温かくて、
 思わず震える声でぽそっと呼べば、
 ん、と首を傾げてくれた

 そんな、
 あなたにとっては何気無い仕草が泣きたいくらい嬉しかった

 情人、わたしね。あなたが好きよ
 あなたがその言葉の意味に少し困って、でもちゃんと振り向いてくれることを知ったから
 これからもずっとずっと大好きよ


 わたしはきっと恋をしている
 あなたにずっと恋をしている


 [ end ]

達哉←リサ
リサの片想いは可愛いなぁと思うのです。
でもあくまで片想い。なんでだろ。
達哉が振り向いてしまうとあの2人がなんか変わっちゃう気がすると言うか (うーん)
07.03.08 up






これが最初で最後

 少年はひとり、滅びの世界に立ち、
 空とはとても呼べなくなった禍々しい朱色の天を仰いでいた

 指先でくちびるにそっと触れて眸を閉じれば、あちら側の彼女の温もりを思い出す

 (温かかった。…良かった。ほんとに良かった)

 あの女性 (ひと) が腕の中で冷たくなっていくことに、
 心が壊れそうになったあの瞬間を、かき消したくてした口付けだった
 それは羽のように触れるだけ
 でも温もりを、感触を、感じれることに心が歓喜した

 ―― 舞耶姉倖せになって…

 壊れゆく世界で達哉が願うことは、ただそれだけだった


 [ end ]

舞耶←達哉
また達哉が受けっぽい。てか受けです (断言)
ニャルを倒した後の選択肢によってたっちゃんが舞耶姉にチューするかしないか決まるんですよね。
わたしはキスするバージョンが好きです。切なくて余計泣ける。
達哉の舞耶姉を想う気持ちは ‘恋慕’ がいちばんしっくり来る気がします。
恋しく思うもあるんだけどなつかしく思う、の意が強い ‘恋慕’ ってイメージ。
07.03.08 up