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PERSONA2

innocent sin

 おれはただ

 舞耶姉と 栄吉と リサと 淳と

 みんなといたいんだ

 ホントはもう叶わないって

 ちゃんと知ってるんだけどさ

 諦められなくて

 現実を受け入れたくなくて

 足掻いて

 足掻き続けて

 見っとも無くて

 格好悪い

 女々しくていやになる

 兄さん、ごめん

 おれ、こんな弟で

 嫌だろ?

 こんな自分の都合で世界を歪ませてしまった罪深い弟なんて

 許せないだろ?

 兄さんは正義のひとだから

 おれを許さないでいて

 おれのことを

 ずっとずっと

 憎んで

 忘れないで

 忘れられたくない

 だから

 どうかどうか

 また罪状を増やしていくおれを

 焼き付けて

 おれがいたことを

 忘れないでいてください


 [ end ]

罰克哉←罪達哉
運命に翻弄されて、誰よりも独りを恐れていたのに、ひとり戦い続けて、
みんなの世界を護り抜いた達哉は良い子です。
達哉は舞耶姉に 「わたしのことは忘れなさい」 って言われて 「嫌だ」 と叫んでいるので、忘れて欲しい、とは絶対言わないだろう、と思う。
ひとつ下の克哉さんバージョンに続きます。
07.07.10 up






君の幸いが君の手にある

 あの子が一体どんな罪を犯したと言うのだろう

 物を盗んだ?

 他人を殺めた?

 ただあの子は精一杯自分の心を護っているだけじゃないか

 あの想いをこの世界は罪だと言うのか

 あんなにも純粋な想いを

 優しい気持ちを踏み躙って

 これはお前の罪状だと

 罰を受けろと

 孤独の牢獄で苦しみ続けろと

 そんな裁きを僕の最愛の弟に突き付ける世界なんて

 僕はいらない

 だから

 どうかどうか

 忘れないでくれ、達哉  お前は倖せになるべきだ

 めいっぱい倖せにならないと駄目だ

 もう僕の知らない

 顔も見れない

 声も聴けない

 お前の鼓動が動いているのかどうかすら届かない

 遠い遠い世界で

 お前はもうひとりの僕のとなりで微笑っていると信じさせてくれ

 そうじゃないと

 僕は、

 お前が護り抜いたこの世界で生きていく意味を見失ってしまう


 [ end ]

罰克哉→罪達哉
この兄さんの想いが罪の兄さんに繋がっていると信じています。
ほんとうに達哉には倖せでいて欲しい。
達哉が倖せじゃなきゃ兄さんだけじゃなくて舞耶姉も栄吉も泣いちゃうよ。
題名はお題サイトさまから頂きました。
『君の幸いが君の手にある。きっとそれは何よりも尊い。たとえその幸いが私でなくとも』 となります。
07.07.10 up






誓いは密やかに

 岩戸山で向こう側の出来事を知り、天野君の涙声のお叱りと平手打ちと抱擁に、弟はかたくなの心をほんのすこし解かした。
 僕たちは迫り来る世界の危機に急かされアメノトリフネに向かう。
 達哉の友人たちと同じ姿をした金色の少年と少女との戦闘。
 元々は人間だったとはとても思えない不死身の生物との戦闘。
 浮上する珠間瑠市。
 絶望的状況に打ちのめされながらも達哉の言葉に気力を取り戻した僕たちは転送装置を使ってアラヤ神社に戻ってきた。

「あれ〜。これ便利じゃん。早く使えば良かったねぇ」
「おい。回復アイテムそろそろ底を着くんじゃねぇか」
「そうねー。お腹も空いたし」

 そろそろ休憩しよっか、と天野君の明るい声が響く。

「お腹空いたってね。マーヤのそれはいつもでしょ」
「お前さんのそりゃいつものことだろ」

 芹沢君とパオフゥのつっこみが綺麗に重なって、
 天野君は嬉しそうに、わお!二人とも息ピッタリね、と当人達に睨まれる科白を発していた。
 仲間たちの会話を半分耳に入れながら僕は達哉の背中を見つめる。
 達哉はただ社を睨み付けていた。

「ね、克哉さんと達哉クンもお腹空いたよね」

 天野君の声にハッと振り返る。
 達哉も同じ反応をしたようで、流石兄弟そっくり、と芹沢君にからかわれた。
 そっくりと言われた達哉は俯いてしまって、その前に一瞬だけ見えた頬が赤かった気がしたのは気のせいだろうか。
 パオフゥが阿呆と芹沢君の頭を小突く。

「ねぇ達哉クン…」

 社を睨んでいた達哉の様子に気付いていたのだろう。
 天野君が達哉に声を掛けた。

「…平気。心配しないで舞耶姉」

 達哉クン大丈夫?と続く筈だった天野君の言葉を遮り、達哉は答えた。
 天野君は、いや、僕も達哉のことが心配だった。
 あの金色の少年たちと戦ったから。
 達哉は、あの三人は俺の弱さが生み出したものだ。すまない、と自分を責めていたけど
 そんなことはどうでも良かった。

「…そう。うん!なら良いの!でも無理したらお姉さん怒っちゃうぞ?」

 天野君はウインク付きの笑顔でそう言うと達哉の手を引き、

「さぁご飯食べにレッツらゴー!」

 先頭をきって港南区に向かった。


 +  +  +  +


「で、なんで俺らがお前ン家に来なきゃいけねぇんだよ」
「だってあんたのアジト無くなっちゃったじゃない。それともなぁによ!私の作ったご飯は食べれないってーの!」

 缶ビール片手のパオフゥに芹沢君が悪鬼の如し捲くし立てる。
 あの二人も飽きないな。

「うららのご飯美味しいのよ〜」

 天野君は芹沢君を宥めつつも視線は料理に釘付けだ。
 …彼女もマイペースと言うかなんと言うか。

 達哉はと言うとベランダに居た。
 この部屋に向かうことが決定したとき、無意識のうちだろう 「こっちの舞耶姉の部屋か…」 とぽつりと呟いたのが印象的だった。
 どうやら天野君の部屋は向こう側でもこの散らかりようらしい。
 達哉は、この世界でも同じか、と呆れていた。
 でもその後に小さく小さく、ホントすごい惨状、と大切そうに懐かしそうに続けたのを僕は聞き逃さなかった。
 その言葉の響きがあんまり優しくて、こちらまでせつない気持ちになったことをお前は知らない。

 準備の整ったテーブルを見て、早く食べましょ!お茶とって来る、とはりきって立ち上がった天野君を見送り、席を立つ。
 僕はベランダに続く窓を開けた。

「達哉、飯出来たぞ」

 達哉の背に向かって声を掛けてみるが……。反応がない。
 無視されたわけではないとすぐわかった。
 ほんとうに気付いていない。
 達哉の視線は都市浮上の際切り離された恵比寿海岸に向いている。
 隣に行けば、泣き出しそうにも見える痛々しい横顔を見つけてしまって、
 堪らずその肩を抱き寄せた。

「…兄さん?」

 流石に隣まで来たことには気付いていたようだ。
 栗色の髪をありったけの優しさを込めて撫でてやり、飯だぞ、ともう一度告げる。
 達哉は少なくとも僕は長らく目にしていない幼い仕草でコクンと小さく頷いた。

 部屋の中に戻ると口喧嘩の騒々しいパオフゥと芹沢君。
 優しく微笑う天野君が僕たちを迎えてくれた。


 +  +  +  +


 宴 〈ただの夕食の筈なのだが〉 もたけなわ。
 最初から飛ばしていた芹沢君が既に酔い潰れてテーブルに突っ伏している。
 僕は今日はセーブして呑んでいるのでなんとか泣き上戸 〈自覚はないんだがなるらしい〉 に陥っていない。

「―― で、こいつらは一体なにやってんだぁ?」
「離れないんだから仕方ないだろ」

 パオフゥが言っているのは天野君と達哉のことだ。
 二人とも芹沢君同じく寝息を立てているのだが……。
 その格好に問題があって、まぁなんというか引っ付いているんだ。
 天野君が達哉を胸に抱き込んでいる。
 いつの間にこんな状態になっていたのか僕たちは知らない 〈酔っ払った芹沢君の愚痴の聞き役に徹していたため。パオフゥは酒が足りねぇから買ってくるとか言って一旦逃げ出したくらいだ〉

「がさつだがいちおう天野は女だろ。達哉もガキとは言え男だ」

 あんなでけぇメロンみてぇな胸に埋もれてなんとも思わないのかね、とパオフゥが呟いた。
 が、がさつって…。
 いや、この部屋の惨状を知った今は強く否定出来んが。
 …ってちょっと待て!パオフゥ!貴様何処を見ているんだ!

「めめめめ、メロン…」
「メロン並みにでけぇだろ」
「いや、まぁ…/// ってそうじゃないだろ!」

 我ながら上手い例えだ、と笑うパオフゥを睨み付け、天野君のベッドにあった毛布を引き寄せる。

「この二人はこれで良いんだ。少なくとも僕はそう思う」

 毛布を拡げ二人を起こさないようそっと掛ける。
 思ったことをそのまま口にした。
 達哉を心配する天野君も
 天野君を護る達哉も
 どちらの想いも恋愛とかそういう類じゃない気がするんだ。
 この二人を見ていると恋愛よりもっと深い愛情を感じる。
 ぴったり当て嵌まる上手い言葉が見当たらないが。
 少なくとも僕は、倖せそうに眠る天野君と達哉を見て、引き剥がそうなんてとても思えない。
 ひとつ思うことがあるとすれば、

「僕は二人を護るさ。何があっても」

 ただそれだけなんだ。

「ま、好きにしな」

 パオフゥはそれだけ言うと今度は煙草がきれたと言い出した。
 買って来る、と再び部屋を後にしたやつの背を見送り、艶やかな黒髪と柔らかな栗色の頭を撫でる。

 この優しい時間が少しでも長く続くように
 決して後悔しないように
 僕はお前と彼女を護るよ
 ―― 達哉


 [ end ]

罰克哉×罪達哉 + パーティキャラ
兄さんの一人称が少し書き易くなって来たっぽい今日この頃。
今回はタイトルも珍しく自分で考えました。達哉に気付かれないよう密やかに誓う兄さん、って感じです。
克達と達舞耶が好きなんですよね。栄達もパオうらも好きだし (好きばっか)
あ、ちなみに巨乳=メロンは某ゲームのひよこ頭の子の発言です。
07.06.16 up