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PERSONA2

たとえ世界が壊れても

 すうすうと規則正しい寝息が落ちている。
 重なったままの少し汗ばんだ手を、握り直す。
 栗色の髪にそっと頬を寄せた。

「栄吉」

 反対側にいる、
 きっと同じように達哉の手を握っているだろうギンコに呼ばれる。

 顔を上げると、涙の跡が痛々しい達哉の横顔が視界の端に映った。

「情人を守って」

 その言葉の本当の意味を汲む。

「わかってる」

「絶対に守ってね」

「言われなくてもそうする」

 オレたちは多分、ほんとうは世界なんてどうでもよかった。

 ただ達哉とお前と淳と…舞耶ネェといる、
 その時間を取り戻したかっただけなんだろうと思う。

 達哉が苦しんで苦しんで、ひとりで傷付いて傷付いて、ぼろぼろになるまで、
 気付けないのが、大馬鹿過ぎるけど、

 もうこの手を離すことはないだろう。

 たとえそれが達哉を余計に苦しめることになったとしても、

 達哉を独りで泣かすよりかはずっとずっとマシだと思うから、もう戻れない

 オレたちは、達哉とともに、この世界で生きていく。


 [ end ]
栄吉→達哉←リサ
たとえ世界が壊れても、きみのいない世界なら、あってもなくても同じこと ――

罪の世界に還ってきた栄吉とリサと、
二人を 「なんで戻ってきたんだ!」 って怒って、でも嬉しさに涙腺決壊して、泣き疲れて眠っている達哉。
達哉が真ん中にいるカプが好きです (克哉→達哉←舞耶とか、淳→達哉←リサとか)
たっちゃんが愛されまくりなのが好きです。
栄吉とリサのコンビもすんごい好きです。罪は本当に好きばかりしかない (笑)
08.02.26 up






夏の太陽

 何度、夏がめぐりきても
 きみがいたあの季節は二度とめぐりこない。

 それを選びとったのは紛れもない自分自身だとわかっているのに、
 涙は未だ止まらない。乾かない。

 おれたちの太陽は、もうこの世界にいない。


 [ end ]
罰栄吉
記憶を取り戻した栄吉あたりで、わたしとあなたにすればリサでも可。
罪メンバー (とくに高校生組み) はみんな哀しい。
でも、罰のEDの舞耶姉が最後に微笑ってくれたので、ああ、みんなはようやくお姉ちゃんを守れたのかなぁ、と思えば、きっと倖せであるんだろうけど。
でも、達哉が、達哉のことを考えると、……いろいろと駄目です。
08.02.08 up






ここで歌ってあなたを呼んでる

 メロディを思い浮かべて頭の中で奏でて口ずさむ。
 風にのって流れていく。

 なぁなぁタッちゃん。知ってるか?
 歌って忘れにくいんだぜ〜。

 記憶は、思い出は、時間の流れに逆らえずいつか薄れてしまうけど、歌は違うと、栄吉は言っていた。

「…ホントだな」

 べつに自分が歌っていたわけじゃないのに。
 替わりにたくさん歌ってもらった。
 ちゃんと覚えてる。

 そういえば、幼い頃習った童謡も忘れたりしないなと達哉は思った。

「…でも、」

 赤い朱い空とも呼べない禍々しい空間を仰いで、

「…俺さ、お前の声で聞きたいんだ」

 歌声とともに、達哉の瞳から透明な雫が溢れて ―― 散った。


 [ end ]
栄吉←達哉
下にある栄吉&リサ→達哉バージョンに続きます。
08.01.19 up






きみがいた世界

 薄暗いライブハウスの中。
 ギタリストもピアニストもいないのでアカペラで歌う。

「…あれ? わたし、それ聴いたことないー」

 ナルシーじゃない普通の歌だ。めっずらしい〜! とリサは栄吉の顔を覗き込んだ。

「あったりめェだろ。今のはタッちゃんに捧げた歌だ。達哉の前だけで歌ったの」

 至近距離の美貌に動揺するでもなしに栄吉は答えた。

「うわ、あんたってそういうとこホントにキザ……」

 うへぇ、とリサが表情を崩す。

「悪いかよ」

 反対に栄吉は得意気に胸を張った。

「べつに悪くないよ。恥ずかしーとは思うけどね」
「相変わらず減らねー口だな」
「ふーんだ、お互い様でしょ」

 トントントントンとリズミカルに言葉の応酬。
 最後に、いーっだ、とリサが歯を食いしばって常の口喧嘩は終わりを告げる。

 しばし沈黙。静寂。

 スマルプリズンのステージに腰を掛けてリサは所在無さげに足をパタパタと揺らした。

「…チンヤン、元気かな」

 ぽつり、と落ちる言葉。

「……」

 栄吉には答えられなかった。

「…淋しくないかな。…泣いてないかな」

 言葉を続けるリサの声がどんどんか細くなって震えていく。

「……お前ぇが泣いてどーすんだよ」

 終いには青いビー玉みたいな瞳から大粒の涙が零れ落ちるから栄吉は腕を伸ばして金色の頭を引き寄せた。

「うぇぇん、だって、っ…」

 リサは空色の制服に涙で濡れた頬を押し付ける。

「逢いたいの、逢いたいよぉ……」

 子供のように泣きじゃくるリサの髪を撫でて、

「…オレだって逢いてぇ…」

 逢って、今リサにしているように抱きしめて、もうひとりで頑張らなくて良いんだと、
 今度こそずっと一緒だと、伝えたい。

 けっして叶う筈のない願いだと、わかっているのに…。

 記憶の中で優しく微笑う達哉を想わない日なんて ―― 二人にはなかった。


 [ end ]
栄吉&リサ→達哉
きみがいた世界。きみといる世界でないことが僕らはとてもかなしい ――

思い出しても思い出さなくても辛く哀しく淋しいのならば、どの道を選ぶのが正しかったのか…。
栄吉とリサのコンビもだいすきです。
08.01.19 up