その微笑みが僕を強くするそして弱くもする
泣きたいときは泣けばいいと思う。
「でも実際、たっちゃんが泣いちゃったらきっとオレらどうしていいかわかんなくって、オロオロしちゃうよな」
「なんだよ、それ」
べったりと悪魔の (血液なのだろうか) 体液の付着した刀を拭いながら、べつに泣かない、と達哉は言った。
でもこの非日常的世界が怖いのはみんないっしょだろう、と栄吉は思う。
いつもパーティの先頭をきって道を切り開いてくれるけれど
達哉だって怖くない筈がないのだ。
「うーん、だからつまりさ。周りがどう思おうと泣きたいときにはたっちゃんも我慢しなくていいってこと」
「いや、だから泣かないって」
泣いても現状は何ひとつとして変わらないだろ、と強く言い切り、刀を鞘におさめる達哉の横顔に迷いはなくて、
「はあ、たっちゃん、強過ぎ」
オレの立つ瀬がねぇ、と拍手喝采を送ってみると、達哉は心底嫌そうに眉を顰めた。
「……べつに強くはないけど」
「じゃあカッコ付け過ぎ?」
「お前に言われたくないし」
「タッちゃん知らないのかい〜? ミッシェル様は実際カッコいいからカッコ付けてもいいんだぜ!」
「……そうなのか?」
最初は、そうか? と真顔で返そうかと思ったけど、
そんなことをすれば、本気で落ち込みかねない栄吉なので止めておく。
「ま、とにかくさ。舞耶ネェもギンコも淳も…オレもいるから」
辛いときは言えよな、と肩を叩かれて、その手に自分の手のひらを重ねる。
「…逆だ栄吉」
舞耶がいて、リサがいて、淳がいて、この手があるから強くいられる ――
「だから俺は泣かない」
「…んー。そっか」
真っ向からそんなふうに言われるとなんか照れるなー! と鼻を掻く栄吉に、
でもありがとな、と達哉は付け加えた。
「あーもうたっちゃん! カッコいいぞ!」
「そ、うか?」
タックルの勢いで肩を組んできた栄吉に驚きながら、
このなんでもないような会話を、何気ない時間を、失いたくないと、
達哉はまた強く思うのだった
[ end ]
罪達哉と罪栄吉
栄吉の誕生日 (の前日) に日記にアップした小話だったんですが……誕生日とはカケラも関係ないですね。
ああ、栄吉ごめんね!お誕生日おめでとう。ナルシストなのに自分に厳しくてひとには優しいお前が大好きだ。
07.11.14 up