凍える心
戦いで荒れ果てたこの極寒の地では、
墓標に供える花を探すこととて一苦労だ
だからハロルドは今日も手ぶらでその場所にやって来た
ちょこんと墓石の前に屈み
手も合わさず口を開く
「兄さん」
ひとりで淋しかった?
ここは寒くない?
と言っても戦いが始まって砲撃を防ぐために作った天候装置のせいでずっとこの猛吹雪だし
もう寒さにも慣れちゃったか?
明るく語り掛けても兄の返事は当然無い
聞こえて来るのは雪を巻き上げる風の音だけ
「あーそうだ。手ぶらでごめんね」
こんなに寒くちゃ花も咲かないわ、と呟きながら墓標に縋る
お手製のロボットでも持って来れば良かったかな、と白い息を見つめながらハロルドは思った
「ひとりは寒いよぉ…兄さん…」
寒さに赤味を増した頬を伝い落ちる涙が端から凍っていく
雪の寒さに凍えているのは冷たくなってしまった兄ではなく、
ひとりになってしまった
片割れの温もりを失ってしまった妹の心だった
END
救われない感じですね。ごめんハロルド…。
でも実はこういう雰囲気の話が好きです。
2007.04.27
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