遠い未来に叶うなら ..... ルーティ

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 マリアンが優しく 「エミリオ」 と呼ぶ
 スタンが明るく 「リオン」 と呼ぶ
 カイルが抱き着き付きで 「ジューダス」 と呼ぶ

 どの名前も
 どの道も
 あの子が迷い、苦しみ躓きながら生きて来た証だと思う

 だからこそ

 「ねぇ。あたしはあんたをなんて呼ぼうか…?」

 悩みに悩んで晴れ渡った空に馳せた想いの答えはそっちに行ったときにちょーだいよ


  天の邪鬼の弟へ
  意地っ張りの姉さんより



 *** あとがき
 マリアンもスタンもカイルもそしてルーティもリオンの救いだったと思うのです。
 最後のシメはカレハロのときにも使ったことのある形だったり。















 茜の空に想いを馳せて ..... スタルーリオ

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 「ね、スタン。気付いてる?
  あんたいっつも空ばっかり見てる」

 「えっ?そうかなぁ」

 「そうよ。やっぱり自覚無いのね」

 ――まるで失くしたあの子を空に探しているみたいよ

 ルーティはその言葉を音にはせず飲み込んだ

 「うーん、あのさ。
  昔はさ、真っ昼間の太陽が、高い位置にある空が好きだったんだけど
  今は少し違うんだ」

 ――今は夕焼けのほうが好きなんだ

 なんでだろうなぁ、と不思議そうに首を傾げるスタンにルーティは返す言葉がなかった
 
 「あ、わかった。ルーティの髪と眸の色だからかな」

 しばし考え込み解を導き出したスタンは明るく笑う

 「…うん、そうね。あたしの色ね」

 ――あの子とおんなじあたしの色ね

 スタンの空色の眸を見つめながらルーティは少し淋しそうに微笑った



 *** あとがき
 ルーティとリオンは黒髪と赤紫の眸なので暗くなって来た夕焼けのイメージです。
 スタンは金髪と青の眸なので真っ昼間の太陽と晴れ渡った空のイメージです。
 なんだかわたしが書くスタンはルーティを無意識に傷付けているっぽい (汗)
 リオンのことを想ってくれて忘れないでくれて、嬉しいのに、苦しいと、ルーティは複雑です。















 光射す ..... スタルーリオ

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 とん、と背中合わせ

 「あんたってチビよね」

 素直じゃない彼女からふいに掛けられた言葉にリオンは眉を顰めた

 「お前よりは高いがな」

 ホンの2cmの差だけど
 でもたしかにリオンはルーティより身長が高いのだ
 ふん、と鼻で嘲笑いながら言い返して来たリオンに
 ルーティも眉を顰めた

 「あんたってほんと可愛くないっ!」
 「お前に可愛いなんて思われたくないっ!」

 背中合わせから向かい合わせになり、睨み合い火花を散らす
 一触即発と思われた2人の頭に、

 「2人ともちっちゃくて可愛いよな〜」

 のほほ〜んとした声と、ぽふっと手のひらが降って来た
 黒髪をくしゃくしゃと撫ぜられ、2人は同時に黄金色の太陽を見上げる
 ピリピリとした空気をものともせずニコニコ微笑むスタンに

 (…くすぐったい…)

 呆然とすると共に2人はそんなことも思った
 ふと気付けば、眉間に刻まれていた皺は綺麗さっぱり消えていた

 ***

 それでも

 「…おい!ちょっと待てスタン」
 「ん?」
 「僕は小さくなんてないからな!」

 ティアラの電流スイッチを片手に釘をさすことは忘れないリオンだった



 *** あとがき
 2歳差の2cm差の2kg差なんですよね。ルーティとリオンの年齢と身長と体重って
 でもPS2リメイク版よりも元祖PS版のときのほうが2人はよく喧嘩していて好きだったかもしれないなぁ。















 憎まれ口が恋しくて ..... スタルーリオ

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 ねぇ、スタン…

 ん?

 あの子ってホント可愛くなかったわよね
 とんでもなく捻くれてたし、素直じゃないし、生意気だったし…

 うん、ルーティそっくりだった

 ……ちょっ、どういう意味よ!

 わわっ!怒るなよ!

 ふんっ!あんた一言多いのよ

 ……うん…あ、それ、あいつにもよく言われたなぁ

 …そう…

 なあ、ルーティ

 何よ?

 リオンは可愛かったよ

 ………

 ほんとうは優しいとこいっぱい持ってたし、
 いつもいつも強がって、ひとりで戦おうとするところは危なっかしくて痛々しくて、ホント目が離せなかったけど…

 ………

 ……俺も皆も戦いたくなかったよ…

 ………

 あのときのあいつの剣さ、いつもと全然迫力が違ってたろ…
 きっと苦しかったんだと思うんだ
 迷って迷って選んだ道だったと思うんだ

 ……うん…

 俺たちは仲間だから、
 何をしてでも助けれるなら助けてやりたかった…

 …知ってるわ……

 そしてそれを拒み、あたしたちの前に立ちはだかることを、
 たったひとりの愛する女性を護ることを選んだのは、あの子自身だと言うことも
 ほんとうに嫌と言うほどわかっている

 ああ、でも…
 それでもね
 今はただ悔恨ばかりが胸を刺す



 *** あとがき
 リメイクDが発売する前に書いていたものなのです。
 リメイクをクリアした後だと台詞がおかしいですが前設定だと思って読んでみてください















 決断 ..... リオン

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 僕の手は小さすぎて、
 たくさんのものを抱えきれない

 そのことに気付いたとき、ならたったひとつ
 一番護りたいものだけは全力で護ると決めた

 全部を護りたいお前とは根本からして違い過ぎるな…

 どうしたって僕とお前の道は交わらないけど

 僕は僕の護りたいひとを護るため、
 お前と彼女をひどく傷付けることになるだろうけど

 でもお前が居れば姉さんは大丈夫だと思う

 だからスタン、お前はお前の信じる道を進め



 *** あとがき
 これもリメイク発売前に書いたもの。
 リオンはニコニコしているスタンが大嫌いで大好きって両方の気持ちがせめぎあっていると良いです。
 ルーティに対してもそうだと思うのですが、なんて言うか
 捨てられたルーティを見下しながら、でもほんとうは護る為にルーティは逃がされたわけだから
 ひとり護られたルーティが憎たらしくて、でもお姉ちゃんが自分の立場じゃなくて良かったって思っていて
 マイナスの感情と、プラスの感情がグチャグチャになってしまっている。
 スタンに対しても同じで、スタンの真っ直ぐさと優しさが苛々するけど
 でもその優しさはリオンにとってとても眩しくて惹かれるものであれば良いなあ、と思います















 家族 ..... ルーティ

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 あたしの家族は大寝ぼすけ天然スタンと、
 元気いっぱい無鉄砲カイルと、誰に似たやらお調子者女好きロニと、
 カイル同じくやっぱり元気いっぱいのチビたち
 あと18年前、熱血口やかましいディムロスとクールにつっこみ厳しいアトワイトたちが守ってくれた
 この青空にいるひねくれ淋しがりのエミリオ

 みんなみんなね、あたしのかけがえのない家族よ



 *** あとがき
 D2のED後なのでスタンは生きております設定なのですよ
 リメイクDのかけがえのない友たち、を見て、ルーティなら家族だろうなぁ、と思いながら















 君は十字架を背負い泣いている ..... スタルー

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 父親を、そしてたったひとりの弟を救えなかった。この手にかけた――

 彼女は忘れようもないことを、忘れちゃいけないと、時折言っていた
 自分を責めている姿は痛々しく、その心には癒えようのない傷が残っている

 ルーティは意地っ張りだし、弱音吐いてくれないし、素直じゃないしで、普段から強がってばかりだ

 でもそんな君が時折夜中にうなされて、飛び起きていることを俺は知っているから

 「ルーティ…?」
 「あ、あたし……ッ!」

 悪夢にカタカタと震える肩を抱き寄せる

 なあ、リオン
 お前のたったひとりの姉ちゃんの涙さえ止めてやれない俺をお前は怒るかなあ…

 でも俺はさ、
 ルーティは泣いて良いと思うんだ

 ずっと頑張って来たから
 泣いても良いと思うんだよ

 君たち姉弟が泣けなかった幼い頃の分まで、
 沢山泣いてくれれば良いと思った ――



 *** あとがき
 先の騒乱の後のスタンとルーティの2人。
 ルーティとリオンはきっと上手に泣けない子だと思う。
 だからスタンの傍にいて、ルーティはまず泣けるようになると良いな、と思います。


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