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OOFURI

黄葉の季節に君と

 あれ? と思った。
 昼休憩に突入して友達と駄弁ってて、ふと教室を見渡すと9組の野球部の面々が居なかったからだ。

(みんなどこ行っちゃったんだ?)

 田島は廊下に飛び出して首を傾げた。

(みんなでどっか行くんなら言っていけよなー)

 無意識にむーと頬が膨らむ。
 ぺたぺたと渡り廊下まで来て、手摺にへちょ、と突っ伏した。

(…なんか淋しいぞ)

 もし田島にワンコのような耳と尻尾が付いていたならみゅ〜んとタレ下がっていたことだろう。
 そのままぼんやりと金木犀の匂いのする風を受けていた。

「田島くんっ!」

 すると下のほうから聞き慣れた、
 でも大きな声はあまり聞き慣れていない三橋の声が、
 届いた。

「みはし?」
「あの ね、これっ」

 こちらに向かってめいっぱい手を伸ばして三橋は声を張り上げる。
 その右手にはコンビニで見慣れたお菓子の箱。
 でもパッケージの色が普段見るものとは違っていた。

「これっ、今だけの!田島くんにあげるっ」

 黒と黄色の配色のお菓子の箱はどうやら10月限定のものらしい。
 頭上にハテナを飛ばして、

「三橋が欲しかったんじゃねーの?」

 負けじと声を張り上げると、

「う、ううん。これ、田島くんのっ」

 三橋は思いっきり首を左右に振って応えて、

「お誕生日おめでとうー」

 そんな言葉を掛けてくれるから

(おおっ?)

 淋しい気持ちなんて一気に吹き飛んでしまった。

「三橋ー!いま行くからそこで待ってろよ〜」
「うんっ」

 オレな、菓子よりも
 もっともっと
 お前のその大きな声の 『 おめでとう 』 が
 めちゃくちゃ嬉しいぞ!


 そう、三橋に伝える為に、
 渡り廊下と階段を風のように駆け抜ける田島の姿があった10月16日。


 [ end ]
タジミハ
田島さま誕生日用に書こうと思っていた小話。UP遅れまくりました…。
ミハ子が持っているのはハロウィン限定のお菓子です。
07.10.24 up