HOME >>

OOFURI

 

 目は口ほどものを言うというけど、タカヤの目はまさにそれかもしれない。

 むぎゅっ。

「えーと、タカヤ…さん?」

 いや、この場合、行動でも気持ちを充分に伝えてきているか。

 とりあえず、おれは自室のドアの前でタカヤに背後から抱きつかれていた。

「…元希さん、ホントに行っちゃうんですか?」

 しょぼしょぼ、って感情を表すそんな音まで聞こえてきそうな元気のない声が背中から届く。

「だってオレ、勉強しないとちょっとやばいンだって」

 ちなみにただいま、絶賛試験前の部活休み週間。
 おれは秋丸の家に勉強を教えて貰いに行こうとしている間際だったり。

『タカヤ君は連れてきちゃ駄目だよ。榛名、あの子がいたら、あの子を構い倒して勉強どころじゃないから!』

 と、その今から向かう家の幼馴染みに、念入りに釘を刺されたのは30分前の通学路で、だ。

「た、たかやー?」

 あまり時間もないので、そろ〜、と腰と胸のあたりをがっちりホールドしている腕を外させる。

 くるり、と体を反転させれば、そこにはしょぼくれたタカヤがいた。
 大きなタレ目がじっとおれを見上げてくる。ウルウルの特典付きでだ。

「邪魔しないから、オレも連れて行ってください」

「や、でも、オレ、秋丸におこらえる…の、嫌だし…?」

「元希さんが怒られそうになったら、オレが守ってあげます! だから、大丈夫です!」

 ううっ! なんか可愛いのがカッコいいことを言ってンよ!

 きっとRPGとかだと 【威力は抜群だ!】 って表示が出ていそうなほど、タカヤの言葉はおれにクリティカルだった。

 さらにタカヤは今度は正面からおれにむぎゅっ、と抱きついてきた。

「元希さん。オレ、元希さんと一緒にいたいです…」

 さらにさらにタカヤは、そんな必殺技まで繰り出してくる始末。

「ああ、もうっ、仕方ねーなあ!」

 良いよ。一緒に連れて行ってやるよ、とおれが腹をくくれば、太陽のように輝くカワイイ笑顔。

「元希さん、だいすきです!」

「おう、オレもだよ」

 そうして、おれの試験勉強は秋丸からおこらえるところから始まるのがいつものパターンなのだった。ちゃんちゃん♪


 [ end ]
ショタカハル
元希さんが攻めのように見えますが、受けです。ちゃんと受けです!(大事なことなので略)
タカヤはやきもち焼きなので、榛名と秋丸が二人きりなるのが嫌で、ウルウルとかちょっと確信犯でやっています。笑
11.07.02 up