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OOFURI




 ぴよぴよテケテケと、そんなファンシーな足音を奏でながら (気のせいだろうけど)
 三橋がこちらに駆けて来る。

 「あ、べくん」

 相変わらず三橋に名前呼ばれると平仮名で呼ばれている感じがして妙にこそばゆい。
 まぁ悪い気はしないんだけどさ。
 むしろその言い方すら可愛い。
 我ながらオレは大分末期だ。

 「おっす。どうした?」

 オレの挨拶に嬉しそうに、おはよう、と返して、あのね、と続ける。

 「今日、体重はかったら1キロ増えてたんだ、よ」
 「おーすげぇじゃん!」

 言いながら柔らかい髪をくしゃりと撫ぜる。三橋も嬉しそうだ。
 普段口やかましく言っちまうのでこういうときくらいオレも手放しで一緒に喜ぼう。

 「お、オレ、これからいっぱい大きくなるよ」
 「ん?うん」
 「だ、から阿部君 ずっとキャッチャーやってくれ、る?」

 ううん、やって欲しい。ください、と最後のほうは泣きそうになりながら言うから、
 こっちの胸にまで熱いものが込み上げる。

 「ばっ!あたりめーだろ」

 仕方ねーな、と思いながら何度言ってもまた不安を募らせる過去の傷の癒えないオレの投手を引き寄せる。

 なぁ三橋。オレはな。

 オレから18,44m先の

 隠れる場所

 逃げる場所ひとつないマウンドで戦うお前を誇りに思うよ。

 「あ、べくん オレ 一生懸命投げるから ねっ」

 だからそこに居てね、とそんな一言すらいっぱいいっぱいになりながら

 懸命に

 縋るように

 告げるお前の古傷ごと全部愛おしいよ。

 「大丈夫。お前を置いてどこにも行くかよ」

 込み上げる想いに、
 あどけなく見上げてくる眸に堪らなくなって、その柔らかい瞼の上に唇を押し当てていた。


 [ end ]
うさこ様から頂きましたアベミハ
わーん!ありがとう!うささんありがとう御座いますー!うささん画アベミハ!!!
これを最初に目にしたときは、仕事終わって 「さーて帰るか」 何気なく携帯パカ

ずぎゃーん!

ってな感じで更衣室で黄色い悲鳴を上げそうになりましたとも!
小話はまた勝手につけました (こら)
…もうちょっと軽いノリにすれば良かった かな?
阿部君は三橋のことだいすきなんだよね、ってイラストだったので阿部さん視点です。
07.07.17 up