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OOFURI

 いつの日もいっしょに

「きょーへー」

 声といっしょに、ぽこん、と軟らかいボールが放られる。
 振り向けば 『女の子?』 とよく見間違われていた頃の幼い榛名がいた。

「やきゅーしようぜ」

 ぎゅうっと抱き着かれて、体全体でねだられる。

「うん。いいよ」

 俺の返答に榛名は瞳を輝かせた。太陽みたいに眩しく微笑う。
 ああ、俺はこの笑顔がとても好きだ。



 ふっと意識が緩やかに浮上した。

(…夢か。また懐かしいのだったな)

 大きな欠伸をひとつして、、起き上がれないことに気が付いた。
 榛名がぎゅうっと俺の左肩をとらえている。

(あらら)

 顔をそちらのほうに向けると、艶やかな黒髪が鼻先をくすぐった。

「榛名」

 まず一回小さく呼んでみる。…反応はない。
 ただ、すよすよと健やかで、平和な寝息が返ってくる。

「はーるーなー」

 二度目は先程より大きく呼ぶ。

 もそ、と榛名が身動いで、肩と枕に埋もれて半分くらいしか見えない顔の、長い睫毛が震えた。
 もうちょっとって感じだ。

「…はるな」

 今度は低めに囁いて、自由になる右の手のひらで剥き出しの首をなぞり、肩を撫で、腕を辿った。

「…ん」

 やんわりとした、愛撫とも呼べない接触に、榛名の体が震える。顔と瞼が持ち上げられた。

「やっと起きた」

 顔を近付けて、おはよと告げる。

「…てめ、普通に起こせ…」

 榛名はちょっと拗ねたように 『はよ』 と応えた。
 そして、朝の挨拶を交わした先から、また眠気に負けそうになっているので、こらこらと体を揺らす。

「榛名、せっかく起きたのに寝るなって」
「んんー」

 再び起こそうとすれば、ぐずぐずと子供のように唸る。
 俺の首に腕を回して、そのでかい体ごと甘えてくる。

「もうちょいだけ」

 二度寝の宣言をする榛名に脱力。
 駄目だよ、と引き剥がそうとすれば、

「きょーへーの手、気持ち好い…」

 だからもう少し寝たい、と甘えた声。

「…気持ち好い、の?」

 半分眠っているような状態のせいか、榛名の口調がふにゃふにゃしていて、あまり聞き慣れないその響きに戸惑う。

「…うん。もっと触って」

 続いた言葉にはドキドキする。

「えっちな触り方するよ?」

 黙っておけば良いのに、つい本音が零れた。

 元から大きな瞳がぱち、と見開かれる。
 あ。結果的に榛名の目を覚まさすことに成功してしまった。
 ……いや、しまった、ってなんだよ、俺。

「良いぜ」

 どうしようもない自分に心の中でツッコミを入れていると、榛名から予想外の言葉が飛んでくる。

「へ?」

 耳がキャッチし損ねて、脳に上手く到達しなかった。

「だから、えっちな触り方しても良いって」

 榛名が根気強く、もう一度繰り返す。

「あ。けど、どーせならさ、めちゃくちゃ気持ち好くしてくれ」

 くちびるの前で淫らなことを、アンバランスな無邪気さと告げて、俺の好きな表情で眩しく微笑む。
 幼い頃となんら変わりないそれに、俺はいまも魅せられて、惹かれる。

 時間無いのになー、とぼやいて、榛名の体を抱き込むと、

「言ってることとやってることが違うぞ、恭平」

 榛名がくすぐったそうに微笑った。


 [ end ]
アキハル
フライング榛名おたおめ。でも誕生日欠片も関係ない出来に (ゴーン)
朝の時間のないときにいちゃいちゃしているのが好きです。
本当は榛名のお誕生日の早朝にイチャイチャしている二人のつもりで書いていたんですが、べつにいつでも良いかこれ、と途中で投げました (こら)
08.05.23 up





 溢れるくらい呆れるくらい 

 投げる相手は誰でもいい。

 おれの球が捕れるなら、

 野球をあいしているやつならば、

 でも、となりにいるのは、あいつじゃないと駄目だと思う。


 [ end ]
榛名独白
キャッチであれば誰でも当て嵌めれるように書いたんですが。
でも、やっぱりどうしてもわたしの中では、秋丸に宛てている榛名の独白。
08.05.14 up





 糊でくっつけばいいのに

 「ふっざけんな!
 動き難いだろーが!
 試合出来ないだろうが!
 却下だ、却下」
「トイレとかも困るしねー」
「や、それはべつに良いけど」
「なに榛名。オレといっしょにトイレ行きたいの?」
「………や、やっぱやめとく」
「なんで?」
「…なんか便所で襲われそうな気がしてきた」
「あははー、それってトイレじゃなくても関係ないだろ?」

 秋丸の言葉に、榛名は50メートル6秒2のタイムで逃げ出した。

 (そして廊下を走るなと先生におこらえました)


 [ end ]
アキハル
糊で引っ付いたらえらいこっちゃです。
そして、うちの秋丸はなんでこんなに何処か黒そうになるんだろうか…。
なんというか、爽やかさが日々なくなっていくのですが…。何故だ。おかしいな。
08.05.14 up