る、まで発音できない
『なぁなぁ、雪男雪男!』 といつも無邪気に僕の名前を呼ぶのが可愛い。
牙を見せてニカッと微笑うのも愛らしい。
今にも零れ落ちそうな涙を堪えて寄せられる眉がいじらしい。
しょうもないなあ、ってことで本気で怒って尻尾をバシバシと床に叩き付けるのが単純と言えば単純。よく言えば素直で羨ましくもある。
兄さんの好きなところなんて両手の指なんかじゃ足りない。挙げればキリがない。
(同じくらい直してほしいところもキリがないけど)
でも、伝えることはない。
だって告げたら、この恋は始まるのではなく終わるから。
「兄に抱く感情じゃないよなあ…」
なんの警戒心も無く、くうくう、と気持ちよさそうな寝息をたてる寝顔に向かってポツリと呟いた。
ごめんね、兄さん。
僕はあなたをあいしてる。
[ end ]
雪燐
口に出しちゃいけない想いもある、と雪男は思っていそう。
近いうちに燐サイドも書きたい小話。
11.07.26 up