きみをいただきます
ぴょーんぴょーん、と建物や樹の間を跳躍して、高層に位置する理事長室の窓からこんにちは。
「兄上、ただいま戻りました」
いや、おジャマしますだろうか?
「ああ。静かにしていろよ」
兄上は執務机に向かったまま顔も上げずの姿勢。
仕事中の兄上はいつもそんな様子なので (先程は声が返ってきただけ珍しい)
大して気に留めず、テコテコ歩いて、ふかふかのソファーに腰を掛ける。
さっそく、両腕に抱えた 『正十字名物バクダン焼き』 と印字のしてある紙袋をガサガサ。
ふわふわと上がる湯気といっしょに、美味しそうな香りもふわふわ。
にんまりと口角をツリ上げて、あーん、と大きく口を開けた。
ぱくんっ!
「熱っ!」
口の中を火傷したのは直ぐだった。
「何をやっているんだお前は…」
いつの間にかこちらに来ていた兄上が呆れたようにボクを見下ろしていた。
「はふいれすぅ」
美味しいけれど、とにかく熱い!
はふはふしてなんとか飲み込む。
「次はちゃんと、ふーふーしろ。ふー」
兄上の言葉にコクンと頷き、
「ふー」
息を吹きかけて少し冷ます。
「その器の身体は猫舌のようだな」
「…ふへんへすね」
それでも、美味しいのでモグモグするのは止めない。
「お前、ハムスターの頬袋みたいになっているぞ…」
「あにふへもひほくち要りまふか?」
「……口の中のものが無くなってから、喋りなさい」
ぺしっと額を小突かれて、もぐもぐもぐもぐ。ごっくん。
「兄上も一口欲しいですか?」
ブスと竹串を突き刺して、はい、どうぞ。と差し出してみる。
「……では、いただこう」
兄上が先程のボクのように、あーん♪
鋭利な八重歯が獰猛にキラリ。
「んむっ!」
なんと兄上はバクダン焼きをスルーして、ボクのくちびるに噛み付いてきた。
「んーッ、…んんーーっ」
ボクはバクダン焼きを落としそうになる右手を懸命に掲げて、
目を閉じぬまま口付けを堪能する兄上はひどく愉しそうだった。
「んんーっ…ぷはっ……もっ、ボクは食べ物じゃないですよ、あにうえ」
ようやく解放され、バクダン焼きを落とすところでした、とぶーぶー訴えれば、
「ごちそうさま、アマイモン」
兄上はまったく悪びれることなく艶々と微笑った。
[ end ]
メフィアマ
先日、17話ショックのあまり絵茶に突撃し仲良くなった某方とお話していて頂いたネタ。
食べることだいすきなアマイモンかわいいよね。悪魔なのに猫舌とかも可愛いよね。
もちろん、熱々のものを平気な顔でモグモグするのも可愛いよね。
アマイモンなら何をしていても可愛いと言うことです。
アマイモンかわいいよアマイモンまじ兄上の天使。それが言いたかった2011年夏でした。
11.08.09 up