おいかけっこ
ボクはアマイモン。大地を統べる悪魔の王様みたいなものです。
現在 (イマ) ボクは兄上に呼ばれてから物質界で過ごしています。
兄上のお気に入りである日本を勉強中です。
こっちに来て頂いたものは携帯電話と無限の鍵。
いろいろなところに行きました。
街にも海にも山にも (場所によってはベヒモスを連れて行こうとして兄上に叱られました)
あ、この前は遊園地にも行きました。
そして末の弟である奥村燐と遊びました。
鬼ごっこをして。
「鬼さんこーちら手の鳴るほーうへ♪」
あのときと同じように口ずさみながら、ふと思った。
(……でも、きっと兄上は追ってきては下さらないだろう)
すぐ帰ってくるさ、と言って虚無界を出て行ったあの日と同じように。
追いかけるのは、
一心に欲しているのは、
いつもいつも自分ばかりで…。
「…そう思ったら、いてもたってもいられなくなりました」
執務机に向かう兄上に、ぎゅう、と抱きつく。
もちろん兄上はお仕事中だから、邪魔だったらしくバリッと剥がされてしまったのだけど。
「むぅ」
思わず、頬を膨らませれば、
「…アマイモン」
「………」
溜め息混じりに呼ばれる。
ちょっとした反抗心で視線だけを返していると、
「アマイモン」
声に怒気が混じった。
「…ハイ、なんでしょう?」
これ以上、兄上を怒らせるのが嫌で、二回目は返事をする。
「お前が私を追い掛ければ良いだけだ」
傲慢とも言える絶対的な言葉。
それでも、そっと頬を撫でながら言われてしまえば、蕩けそうになる。
どうやらこれからも、鬼ごっこの鬼役はずっとボクのよう。
それはなんだか、ちょっと悔しくもあった。
「兄上。兄上はボクが兄上をおいかけると嬉しいですか?」
「さて、どうだろうな?」
質問を質問で返すのはずるいと思います。
「まぁ、そうだな。私は簡単に捕まったりはせんよ、とだけ答えておこうか」
「…よく分かりません」
もう一度、むぅ、とぶーたれると、目の前の兄上はひどく愉しそうに笑った。
「お前はずっと私を追い掛けていれば良いさ」
―― なぁ、可愛い私の弟よ。
兄上が嬉しいのかどうかはやっぱりボクにはよく分からなかった。
[ end ]
メフィアマ
必ずあなたを捕まえてみせる。振り向かせてみせる。
お題タイトル様を廻っていてふと思いついたお話。
でも結局、兄上がそれを望んでいるみたいな。そんな感じです。
11.07.30 up