朝日とリネンとたわむれ
短い睡眠時間を経て、目を覚ます。
ゆっくりと伸びをして、緩く羽織っていた浴衣が擦れると、肩口にピリリとした痛みが走った。
そこを指先でなぞるとボコボコとした凹凸。
いわゆる歯型がクッキリと残っていて、となりで深い眠りに就いているトンガリ頭を見つめた。
こんなものはどうせ直ぐに消えるのだけど。
ふにふにと柔らかな頬を撫でてやる。
「うみゅ…」
睡眠の邪魔をされたアマイモンはむにゃむにゃと言葉にならない声を発してから、瞼を少しだけ持ち上げる。
まだ寝ぼけ眼の碧色がこちらを見上げた。
「…あにうえぇ?」
舌足らずに呼ばれ、へら、と微笑う。表面上は感情を滲ませない弟にしては珍しかった。
「肩が痛い」
やけに機嫌が良い。寝惚けているな…、と思いながら、先程、思ったことをそのまま告げてみれば、
「? ボクは腰と股が痛いですよ?」
キョトンとそんなお返事。
「私が残したものなら何だって嬉しいだろう、アマイモン」
低く甘く囁いてやれば、
「ハイ。嬉しいです」
もう一つ素直なお返事。
「イイ子だ。お前はまだ寝ていなさい」
それに口角をつり上げて立ち上がろうとすれば、くん、と浴衣が引っ張られた。
「あにうえ、もう少しここに…」
これは本当に大分寝惚けているらしい。
「ここにいても、もう私にはメリットがない」
暗に仕事がしたい、と告げれば、
「また抱っこして下さっても良いですから」
アマイモンの幼い言い方に、抱っこ…、と反芻して、
「それはお前が嬉しいだけだろう?」
と問い掛ける。
「ハイ。うれしいです」
―― 兄上もうれしくないですか?
そして、続けられた言葉に口元を歪めた。
「お前が頑張ってくれるならば嬉しいかもしれんな」
「ボク、がんばります」
むくっと起き上がったアマイモンに、
「寝る気はさらさらないではないか」
くっくっと喉で笑う。
「兄上が起こすからです」
正面から抱きついてきて、あーん、と貪るように唇を重ねてきた弟を、昨日の夜のように再び組み敷いてやった。
[ end ]
メフィアマ
起きぬけのイチャイチャしている話が凄い好きなので思わず書いてみました。
アマイモンに抱っこって言わせたかっただけとも言います。笑
11.07.23 up