HOME >>

BlurExorcist

口さみしいので

 アマイモンにはよくない癖が沢山ある。
 その中でもメフィストが特に口を酸っぱくして注意しているのが、爪を噛む癖だった。
 少しくらいならば目も瞑るが、不服なことがあるときによく発揮されるそれは、放っておくと血が滲むまで噛んでいるので手に負えない。

 今日も何かお気に召さないことがあったらしい。

 理事長室から正十字学園の街中を見下ろして、ガリっと耳障りな音が響いた。

「…アマイモン、止めろ」

 ガリ。

「アマイモン」

 ガリ。

「……ちっ」
「…いたっ!」

 言っても訊かないアマイモンに舌打ちと共に強行手段。
 右手首を乱暴に引っ張った。
 よろけたアマイモンはメフィストの椅子の前に跪く形になる。

「爪を噛むなと言っている」
「だって、なんだか歯がかゆいんです」
「理由は聞いていない。止めなさい」
「うー…」

 恨めしげな視線がメフィストを見上げる。

「そんな表情をしても離さんぞ」
「う〜〜…あにうえぇ!」

 もう離してください、と愚図るように言って、また爪を噛もうとするのを、指を一つ鳴らして棒付きキャンディを出現させる。
 聞き分けのない口に突っ込んでやろうとして、メフィストはピタリとその動きを止めた。

「……」
「あにうえ?」

 不自然な流れで固まった兄の動作に、アマイモンもキョトンと首を傾げる。
 メフィストはキャンディを一旦仕舞って紫色の手袋を外した。

 アマイモンと同じように鋭利な爪のついた指先をすぐ傍の唇に押し当てる。
 
「んぅ、む…」
「これでも舐めていろ」

「ふぁい」

 メフィストの言葉にアマイモンの目元が綻ぶ。

 かじかじ。
     はむっ。
   かぷっ。
      ちゅうっ。

 先程、自分の爪を噛んでいたときとはまるで違って歯を立てたりすることなく、幼子のように、ちゅうちゅう、と吸い付いてくるのが妙に可愛らしかった。

 ―― しかし、これでは仕事が出来んな…。

「あむ♪」

 機嫌を直したらしいアマイモンを見つめてから、メフィストは長時間書類やモニタと睨めっこしていた目頭を空いているほうの指先で揉みほぐす。

 指先にだけぬるま湯温度を感じながら、そのまま目を閉じた。


 [ end ]
メフィアマ
爪をかじかじしているアマたん可愛いなって思いまして。
あと受けの子がちっちゃい子みたいな仕草をするのが好きなので。
11.09.05 up