呼ぶ


 死ぬのが恐い ――
 その思いは、わたしの全てを蝕み、壊し、飲み込むものだった。
 心に、深く、深く、抉り様もなく、根付けられた "恐怖" 。

 それを消し去り、真っ直ぐに、わたしの心に届けられたひとつの言葉があった。

「ステラ!君は死なない!君はおれがまもるから!」

 生と死が紙一重で交差する戦場の中で、一点の曇りもなく響いた言葉 (それ) に、涙が溢れた。

 沢山の記憶が、思い出が霞んで、わたしには何が本当なのか…。一体何を信じれば良いのかわからなかった。
 欺瞞だらけの世界で生きていたわたしは、あなたに出逢って、はじめて本当の "想い" を貰ったの。

「ッ……ステラ!ステラッ!」

 ねえ、シン…泣かないで。わたし、あなたが呼んでくれたから戻ってこれた。
 こんなにも血に塗れたわたしを "まもる" と言ってくれて、ありがとう。ほんとうに嬉しかった。

「シン……好き」

 わたし、やっと辿り着けたの
 やさしくて、あったかい世界に ――
 あなたの腕の中に…



END


2005.06.18