達途上


 ふと横に居るアウルに視線を動かすと、1人遅れてついてきていたステラが楽しそうに踊っているのを見つめながら軽く首を傾げていた。

「何やってんだ。あれ?」

 程なくしてアウルは、隣に居るオレの腕を引っ張り、頭上に疑問符を飛ばしながら問い掛けてきた。

「浮かれてる馬鹿の演出…じゃねーのか?オマエも馬鹿をやれよ…馬鹿をさ」

 ちらっとステラを振り返り、応えると、アウルは "ん〜?" と、不思議そうな顔。
 オレの言った意味が解っていないようだけど…まぁ、構わないか。

「つーか…オマエさ」

「へ?何?」

 アウルが話しかけてきたので丁度いいと思い "ステラは良いから…" と、話を逸らすと、オレは先程から気になって仕方なかったことをツッコむことにした。

「その服…前開きすぎなんじゃねーか?」

「…」

 オレの言葉にアウルはきょとん…と、した表情を浮かべると、自分の胸元をじっと見る。

「ステラも胸開いてんじゃん」

 アウルは、暫く何かを考えるような仕草をして、まだくるくると廻っているステラをぴっと指差しながら見当外れの答えを返してきた。
 違う。
 オレが言いたいのはそういうことじゃねえ。

 がくっと肩を落とし、はぁ…と、ため息をついた。

「あいつは女だから良いんだよ」
「ふーん…男女差別」

 半分呆れつつそう応えると、今度はアウルにとってその答えが不満だった様子で、むすっとした顔をされた。
 さらに不機嫌さを表すように、スタスタと早歩きになり、先に行こうとしたので、慌ててその腕を掴んだ。

「ちょ、待て!ったく――馬鹿!オレが嫌だから閉じてろ!」

 ぐんっと襟元を引き寄せて、至近距離でそう告げると、アクア色の丸っこい瞳がパチパチと瞬く。

「え…?」

 こういうのはガラじゃねーのに…と思いながらもアウルの格好が何だか無性に嫌だと思った。
 其れでなくてもこいつは顔が可愛いのに…。
 ぐいぐいと襟を引っ張り、胸が見えないようにきつめに合わせると、アウルがジタバタと暴れる。
 こいつ…じっとしてやがれ。
 オレは構わず襟元を合わせようと悪戦苦闘する。

「す、スティング!ちょっと苦しいってッ」

 だが、その言葉が降って来て、ふと胸倉を締め上げるような状態になっていたことに気付く。
 ぎょっとして、襟から手を離した。

「ああ、悪い…」

 謝罪の意を込めて、背を擦ってやると、アウルはけほけほと軽く咳き込んだ後じーっと人の顔を見つめてきた。

「へえ…スティング〜嫌なんだ?」

 にこーっと満足気に微笑して、にじり寄ってくるもんだか一瞬呆気に取られる。
 その態度が気に喰わなくて…

「ああ、嫌だね。オマエはオレのもんだから」

 と、ふんと鼻で嘲笑って応えてやる。

「なっ!」

 途端に目の前の顔が茹蛸みたいに真っ赤になったので
 オレは口角を吊り上げて笑った。



END


2004.10.10