ありのままのでいて


 ―― 君はそのままの、在りのままの君でいい

 「変な色…」

 シャニは自分の左目を見ると、いつもそんなことを言う。
 それはアメジストと琥珀の強烈なコントラストがとても気に入っている俺としては少なからず不服な台詞である。

 「お前なぁ。そういうこと言わねぇの」

 消えるワケでもないのにごしごしと乱暴に両目を擦るから慌ててその腕を掴んだ。

 「だって変なんだもん」

 シャニは口を尖らせ、頬を膨らます。タコかお前は。
 そう言ってやれば、両腕を突っ撥ねるようにしてジタバタと暴れ出す。
 自分より一回りも小さい華奢な身体を押さえつけるのなんて簡単なことだ。

 「俺が好きだから良いんだよ」

 そっと左目の瞼に口付けを落し、小さく囁く。
 困ったような、
 泣き出しそうな、
 まだ自分の中では葛藤があるらしく、複雑そうに眉を八の字にして、シャニは俺の胸にしがみ付いた。

 「だったらずっと好きでいてよ。…ずっと言ってよ。
  …オレが、オレが、 …この変な目を好きになれるまで…」

 「ハハッ そんなこと…」

 ―― お安い御用だ

 シャニの自分いじめは半端じゃない。
 痛いのは嫌いなくせによ。
 俺の一生はシャニに‘好きだ’と囁いて終わるのかもしれない。
 まぁそれも悪くはないかな、と思う。



 ありのままの君でいい。
 いや、ありのままの君がいい。

 空気のように一番傍にいて、それが当たり前になるよう願った。



END


フォルダ整理中に発掘したものです
(04.06.20って書いてあったー。古い…)
なんか昔書いたお話を読むと 「おお!こういうの書いてた書いてた」 と微笑ましくなって不思議です (笑)

再up : 07.05.12