オルガ・サブナックのシャニたん観察日記


 本日の俺は窓越しに晴天の空を見上げ、掃除に精を出すことに決めた
 三角巾とエプロンを装着し、はたきと掃除機を手に、各部屋を回る
 するとその途中からじーと背中に突き刺さる視線に気付いた
 あん?と思いながら視線を辿り、振り向く

 「…しゃ、シャニ?」

 ドアから半分だけ体を覗かせて、シャニがこちらを見ていた

 「おるにゃ!」
 「お、おう?」

 しゅび、と短い手を上げ、俺を呼ぶシャニの勢いに少したじろいだ

 「シャニたんもお手伝いしたいにゃ!」

 キラキラと期待に満ちた眼差しが真っ直ぐに俺を見上げる
 うおっ!…ま、眩しい!

 「そっか。サンキュ」

 シャニは偉いなーとお礼を言いながら
 しかしシャニに出来る家事なんてあったか、と俺は内心冷や汗を掻いていた

 部屋を見渡し、シャニに相応しい (と言うかシャニにも出来る) 家事を探していると
 シャニは自ら

 「シャニたんお風呂洗うー」

 と言った

 おいおい、風呂洗うって…
 水嫌いなのに大丈夫か?

 俺がそう聞き返そうと思ったのも束の間気付けばシャニは視界から消えていた

 な、何!早ぇ!
 あのゆったりまったりのんびり屋のシャニが!

 普段の行動からは想像もつかない素早さだ
 シャニは足取り軽くバスルームに向かっていた
 俺も心配だったので後を追うことにした
 てかこれってお手伝いっつーか… ――
 俺は好んでよく見る (そして感動のあまり号泣する) はじめてのおつかいをなんとなく思い出していた

 バスルームに到着したシャニは、

 「あわあわ〜にゃ〜ん♪」

 鼻唄を歌いながらスポンジを手に取っている
 もしかして風呂でよく作ってやるシャボン玉が見たいから
 風呂掃除がしたいなんて言い出したんだろうか?
 シャニを見守りながら俺は首を傾げていた

 シャニは気合いを入れて、腕捲りをし (って家に居るときはいつも服着てないので腕捲りのふりだ) 洗剤をこれでもか!とスポンジに垂らし (おいおいおいおい、かけ過ぎだー!と思わずつっこみたくなったがシャニは一生懸命やっている、と自分を納得させ、なんとか堪えた…)
 肉球お手てを泡まみれにすると浴室の縁にぴょんと飛び乗った
 振り振り尻尾とケツが可愛すぎる
 かなり沸いたことを考えていると、
 ふいにその思いとは正反対の嫌な予感が俺の胸に去来した

 風呂場って滑りやすいんだよなぁ…

 そう思った次の瞬間 ――

 「にゃーっ!」

 つるん!どぼんっ!

 そんなBGM付きでシャニの絶叫が浴室に反響した

 「しゃ、シャニー!大丈夫か!」
 「痛いにゃ…痛いにゃ…」

 洗剤が目に入って泣きじゃくるシャニを慌てて湯船から救出する

 タオルで顔を拭いてやりながら
 お手伝いはやっぱり洗濯物入れくらいからかな、と俺は苦笑した



END


ほんとうはオルガさんに割烹着を着せようかと思っていたとか
言ったらオルガさんファンに闇討ちされるでしょうか (でも似合うと思うんだ!)

2007.03.09