世界の終わりに
世界とは一体なんだろう?
人が住んでいたり、行ってみたり出来る場所を差すならば "世界が終わる" と言うことはありえない。
全ての人間が死滅するなんて普通では考えられないからだ。
オルガは長い間、そんな風に考えていたが、実際は違うな、と思い直すことになる。
彼の世界がとても唐突に終わりを告げたからだ。
モニタ越しに拡散する光。チカチカと点滅する赤い文字。コクピットにはビービーとけたたましいエラー音が響いていた。
「シャニ……?」
オルガは呆然とした。
今起こった事が、目の前で起こったことなのに、理解出来ない。
否、爆破した機体に搭乗していた者の名前を呼んだのだから本当は理解していたのかもしれない。
だが、心の何処かで、その事実を認めたくない、と叫んでいる自分が居た。
「ハッ…何だよ、これ…」
フォビドゥンが墜ちた。
たったそれだけのことでオルガの世界は終わりを告げた。
―― 世界とは愛しい存在がいる場所のことを差すのだろうか?
脳裏にそんな疑問が浮上する。
答えを出す前にカラミティのコクピットは高熱に包まれた。
熱いとも、痛いとも、感じない。一瞬のことだったから当然だろう、とは思わなかった。何も感じないのは他に理由がある。
シャニがこの世界に居ないからだ。
彼が居ないだけで、世界も、自分も、空っぽになってしまった。
(どうせ世界が終わるんなら抱き合って逝ければ良かったのによ…)
ほんの少しの間だけどひとりにさせてしまった。拗ねているだろうな、と苦笑する。まぁ、それも悪くない。
(あんな駄々っ子を手に負えるのは俺以外在りえねーだろ)
世界の終わりに想ったのは君のこと。
オルガの想いが向う先はいつだってシャニの許だった。