ひらり、ひらりと舞い落ちる白い結晶に、手を伸ばす。
黒い革に覆われていない手のひらに落ちたそれは、人の体温に触れ、すぐ水滴となった。
ぼう、と立ち尽くして数分。
近付く馴染み深い気配。
振り向かず、天を仰いでいると、冷えた手を握られた。
そして強引に曳かれる。
彼は何も言わない。
ただ私の手を曳き、歩を進める。
そうして雪の掛からない軒先に辿り着く。
自然と離れる手。
髪と肩を軽く叩かれた。
雪が、いや、熔け掛けの氷の欠片と雫が散る。
彼はそうして私の体から雪の名残を払い終え、先程まで居ただろう、庵の中に消えていった。
握られていた手が、ほんのすこし温まっていることに気が付く。
だから貴方は、とても優しい。