ひらり、ひらりと舞い落ちる白い結晶に、手を伸ばす。
 黒い革に覆われていない手のひらに落ちたそれは、人の体温に触れ、すぐ水滴となった。
 ぼう、と立ち尽くして数分。
 近付く馴染み深い気配。
 振り向かず、天を仰いでいると、冷えた手を握られた。
 そして強引に曳かれる。
 彼は何も言わない。
 ただ私の手を曳き、歩を進める。
 そうして雪の掛からない軒先に辿り着く。
 自然と離れる手。
 髪と肩を軽く叩かれた。
 雪が、いや、熔け掛けの氷の欠片と雫が散る。
 彼はそうして私の体から雪の名残を払い終え、先程まで居ただろう、庵の中に消えていった。
 握られていた手が、ほんのすこし温まっていることに気が付く。

 だから貴方は、とても優しい。



2005.12.09

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