「辰伶って頭コチコチでホントうざいよね…。見ててムカつく」
「な、なんだと?!」
螢惑は時々ワケもなく俺に喧嘩を吹っ掛けてくる。
理由はいつも唐突かつ、くだらないことばかりだ。
どうやら俺のやること、なすこと、いうこと、全て気に入らないらしい。だが、それはお互い様だ。
こっちはギリギリまで怒らないように善処しているというのに、いつも徒労で終わってしまう。
結局、最後はいつも喧嘩という名の死合いに発展する。
まったくアイツも少しは‘我慢’を覚えれば良いんだ。
幾度注意しても俺の言うことなんて素直に聞きやしないが。
でも、思いきり喧嘩をした後は妙に清々しい気分になる。
傷だらけのくせに (否、俺にも言えるが) 螢惑も微笑っていることが多い。
過去の確執からか、俺達は互いに言葉で伝える術を知らない。
妙な話ではあるが喧嘩は一種の和解 (?) の仕方なのかもしれない。
死合いが終わり、己の身体を見ると、今日受けたダメージは少なかったようだ。
代わりに螢惑の腕からはボタボタと血が滴っていたが
―― …。
そういえば舞曲水で思いきり斬り付けたな…と思い出す。
傷口を曝したままと言うのも如何かと思ったので、放っておいたら何もしなさそうな螢惑の身体を引き寄せた。
「いたたたっ」
「貴様から吹っ掛けてきたんだろう!我慢しろッ!」
消毒液を掛けると、子供のように‘痛い’と騒ぐから‘喧しい’と跳ね付けた。
螢惑は不満そうに頬を膨らませたが、手当ては大人しく受けてくれた。
自分で傷付けて、手当てもしてやるなんて、妙な話だ。
だが、どうでもいいと思っている奴を相手に喧嘩なんてしないしな。
なあ、螢惑。俺はお前には絶対に負けん。
だから貴様も強く在れよ
―― …。